第14話 愛娘

 ハンスと連れだって朝の食卓に現れたアメリアをエリザベートは笑顔で我が腕に迎え入れた。


「そなたの幸福が我が胸に滲み入って来るぞ!ありがとうアメリア!私は本当に幸せ者だ!」


「何をおっしゃいます! 私は姫姉様が御子をお抱きになる為の“ただの先達”にございます。」


「まだその様な事を申すのか! それに“御子”なら既にこの腕に抱いておる」


「えっ?!」と驚くアメリアから身を離し、エリザベートは騎士の流儀に則ってアメリアの前に片膝を付いた。


「古のチャックマの王族の血を引くアメリア姫よ! どうか私の娘になっては下さらぬか! 歴史を紐解けばこの地は、元はそなたの祖先の領土!我が一族や現皇帝すらもその事実は曲げるべきではない! だから私はあるべき物をあるべき者に還す」


 途端にアメリアはエリザベートの足元に伏した。


「その様なお言葉、勿体のうございます! 『どこが誰の領土か』など、長い生命の歴史からすれば些末な事! しかしエリザベート様が治めるこの今が、この土地にとって最も幸せな時なのです。そのエリザベート様を娘としてお助けできるのであれば、私は喜んで命を賭します!」


「ありがとう!アメリア!」エリザベートはアメリアを抱き締めながらハンスを仰ぎ見る。


「そなたには我ら二人の契りの証人と“かすがい”になってもらう! 今宵は必ず我が寝所へ参られよ! 但しクチナシガーデニアは要らぬぞ!」

 ウィンクしたエリザベートの頬は花瓶の薔薇の色を映すまでもなく紅潮していた。






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