第38話 新たな時代

戦況はいいとは言えない。

戦は長引き、人々の亡骸だけが増えて、重なっていくだけだった。

暴動を起こした一部の民とは関係のない人間まで巻き込まれていく。

その勢いは少しずつ藍玉を追い詰め、泥の中のようにしつこく、憎しみ合いが渦を巻く。

城の方から争いの巻き起る場所を見ながら、藍玉は酷く疲れた顔を浮かべる。

そこに更に追い打ちをかけるように、兵の知らせが飛び込んできた。

「藍玉様! 物資が底を尽きて参りました……! このままでは!」

兵が汗に濡れながら、焦りに焦って小走りでそう伝えた。

「なんだと!? まずい事になった……このまではじきにここも落とされてしまうぞ」

二十年以上、長く平和の続いていたこの国は、突然起こったこの戦には対応しきれていなかった。

武器も兵も食料も。

数えるほどしか無いのが現実なのだ。

「一体…………どうするべきでしょうか……」

城の中で兵や家臣がざわめき、王の答えに固唾をのみながら待つ。

立ち尽くした王は握りしめた拳を小刻みに震わせ、己の無力さに憎いとすら感じた。

「翠色達は………どうなのだ?」

「翠色殿達はこちらに向かっている様子ですが…………追手が行く手を阻んでいます。こちらには来れないかと」

「そうか……………………」

翠色達が来ることを事前に見計らっていた。

敵は民を集め、暴動を起こさせた。

権力を持ちながら、偵察に来ている?

藍玉は気づく。

途端に振り向いて、血相を変えた。

「まさか…………! 敵はこの城の内部に攻め込んでいる!?」

考えてみれば、それは当たり前だった。

翠色達の逃げる行き先を知っているということは、翠色と藍玉の手紙のやり取りを見ているということ。

内部に忍び込まさえすれば情報を盗むことは容易い。

誰か内通者がいるか、裏切り者がいるか。

それとも、“あのお方”に関係する者か。

敵の思惑は、おそらく国を“作り変える”こと。

そしてそのために、次期王女である紅玉を殺そうとしていた。

でも……今の動きを見るに追手は翠色達を足止めしているように思えた。

つまり奴らの次の狙いは、藍玉なのである。

「――――っ! なぜ今までこんなことに気づけなかったのだ! 奴らは新しい時代を作ろうとしているというのに…………!」

藍玉が怒りに机を叩く。

その威圧感は配下を思わず固めるほどだった。

「城中に告げ! 敵はこの中にいる! この中に紛れ込んでいる!」

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初恋の夏 叶わないとしてもそれでも 紫水ミライ @simizumirai

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