第10話 孔雀
廊下をつたい、食堂に入る。
豪華な食事がテーブルの上に並び、三人は椅子に座った。
使用人がワインをグラスに三人分注ぎ、テーブル中央に並べる。
孔雀がグラスを持ち、翠色と紅玉も続いてワイングラスを取る。
それをカチン、とグラスをぶつける。
ゆっくりと飲み、孔雀はふと話し始めた。
「さて、お二人がせっかくここに来てくださったわけだ。話は聞いてる、厄介なことになったそうだね。それと、一つ訊いていいかな?」
「どうぞ」と紅玉。
「お二人はどんな関係で?」
「わたしと翠色の関係、ですか?」
「はい、少しばかり気になっていましてね」
孔雀はにこやかな笑みを浮かべる。
翠色と紅玉は互いを見合わせ、頷きあって答えた。
「恋人です」と。
孔雀はそれを見て目を細める。
その目は先程までの笑顔とは違い、冷たく冷徹な目をしていた。
孔雀はふふっと少し笑った。
「なんでもない、ただ気になっただけですよ。お二人はそれほど仲が良いのですね、羨ましい」
孔雀の態度は元の笑顔と明るい声色に戻る。
それが少し不気味で、紅玉は苦笑を浮かべた。
「さぁ、食べてください。せっかく用意したお食事なのですから」
孔雀がそう高らかな声を上げた。
二人はテーブルクロスの左右に並んだフォークとナイフを手に取り、ステーキを切り取り口に運ぶ。
胡椒の振られた上品なスパイスと同時に溢れ出る肉汁。
程よい噛み応えと歯に染み付くような濃厚な脂。
味はあっさりとせずにじっくりと舌の上に残る。
洗礼されつくした肉の味だった。
「美味しいですね!」
紅玉が目を輝かせながら嬉しそうな表情。
翠色も声にこそ出さないがその味はどんな肉よりも美味しく感じた。
それに微笑みながら孔雀は言う。
「でしょう? 王家に仕える専用の一流料理人がその腕を振るって作った料理。お気に召したのなら何よりです」
それから食事をしながらしばらくの談笑。
その中、紅玉は微かな違和感を覚えた。
翠色はなぜか孔雀と会話しようとしないのだ。
ずっと黙って、ただ淡々と料理を食べている。
食事が終わると、使用人の案内のもと二人は部屋を借りることとなった。
部屋は翠色と紅玉で共有の一部屋。
真ん中に机と椅子。
部屋の端に二つのベッド。
隣の部屋へ繋がる扉を通ればそこは書斎。
シンプルながらも綺麗に整った部屋だった。
紅玉は椅子に腰掛け、翠色に向けて尋ねた。
「翠色、なんであんなずっと黙ってたの? もうちょっと愛想よくしてもいいんじゃない?」
「あの人、孔雀とやらはどこか怪しい気がするよ」
「怪しい? 良い人だと思うけどなぁ」
「どこか不自然というか、ずっとニコニコしててさ。作り笑いみたいな気がするんだ。なんだろう、嘘をついている感じがするというか」
「うぅ〜〜ん、なんだろうね………………」
「とりあえず、念の為気を付けてくれ。何か裏があるかも」
「分かったわ、翠色がそう言うなら」
一方、部屋のどこかから盗み聞きする怪しい影があった。
二人はそれに気付くこともなく会話を続けていた。
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