阿号随想
@tateba_factory
仕事帰り、寝過ごし、そして鶏の定食――意味のある電話をかけた一日
午前四時にようやく寝た。
身体は「今日は無理だ」と訴えていたが、目覚ましの音に従って起きた。遅延した電車、詰まったエレベーター、かろうじて職場に到着。そして、今日も電話をかける。
仕事はコールセンター。アポイントを取るのが僕の役目だ。相手は時に優しく、時に冷たく、時に何を言っているのか分からない。それでも、意味のない電話はかけない。一つひとつの会話に意味を込めている。上手くいかなくても、それでも全ては必要な一歩だと思っている。
だが、正直、脳が縮こまってくるのが分かる。ストレスと不安で、考える幅がどんどん狭まる。明日かけなければいけない相手のことを考えるだけで、少し憂鬱になる。それでも、今日を終わらせるために精一杯話す。
帰りの電車では、気が緩んで最寄り駅を寝過ごした。次の駅で折り返して戻る。遠回りは、今日だけじゃない。たぶん人生もそうだ。
最寄りの駅に着いたとき、自然と定食屋に足が向いた。昨日と同じ鶏の定食を注文する。食べることには、実は少しだけこだわりがある。空腹に耐えるのは難しい。だからこそ、ちゃんと食べたい。この鶏の定食は、昨日も美味しかった。だから今日も頼んだ。何となく、じゃない。
食後、ペットボトルのコーヒーを手に、ベンチに腰掛ける。風が木々を揺らしている。ぼんやりとそれを眺めながら、ふと思い出す。自分が送ったチャットに、誰からもスタンプが付いていなかったこと。
別に、評価されていないとは思っていない。ただ、少しだけ引っかかっただけだ。たぶん忘れられていたか、忙しかったのだろう。そうやって自分をなだめながら、今日をやり過ごしていく。
意味のある電話をかけて、寝過ごして、定食を食べて、風に吹かれる。
それが、僕の今日だった。
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