第二十五話 政府の裏の組織

■ 秘密裏に動く者たち

 夜の闇に紛れ、隼人たちは慎重に移動を続けていた。

 政府の追跡を逃れながらも、これまでの行動で明らかになった事実が、彼らの思考を占めていた。


 森の奥深く、隼人たちは人気のない廃工場に身を隠していた。

 かつて政府の物資保管施設だったが、今は朽ち果て、誰の目にも触れない場所となっていた。


 本田が端末を操作しながら、低く呟く。

 「政府の動きは相変わらずだが、何かが変だ。」


 美咲が画面を覗き込み、険しい表情を浮かべる。

 「政府のデータには、私たちに関する動きがあるけど、それ以上に“別の動き”がある……?」


 隼人が眉をひそめた。

 「政府とは別の組織といっていた組織か?」


 カロンが静かに頷く。

 「それが“エクス・ノヴァ”だ。」


 本田が腕を組みながら険しい表情を浮かべる。

 「エクス・ノヴァ……それは何なんだ?」


■ 「エクス・ノヴァ」とは何か

 カロンは少し間を置いてから、静かに語り始めた。


 「“エクス・ノヴァ”は、政府の一部ではないが、政府と繋がりのある影の組織だ。」


 隼人が鋭い目を向ける。

 「……つまり、独立した組織ってことか?」


 「そうだ。」


 カロンは頷く。

 「政府が公式に進められない“特殊な研究”を担っている。特に、妖精たちの進化や、鉱石が持つ未知の力を研究するために動いている。」


 美咲が疑問を口にする。

 「政府の指示を受けているわけじゃないのに、なぜそんな組織が存在するの?」


 カロンは一瞬目を伏せた。

 「エクス・ノヴァは、もともと政府の一部として存在していた。しかし、政府が妖精の進化を危険視し、研究を封鎖しようとした時、彼らは消される前に行動し独自の道を選んだ。」


 カロンはわずかに笑みを浮かべながら、こう続けた。

 「“エクス・ノヴァ”――新たなる誕生という意味を持つ名前だ。」


 本田が低く呟く。

 「つまり……政府が封じた研究を、エクス・ノヴァは今も続けているってことか。」


 カロンは静かに頷いた。

 「そうだ。彼らは、“進化”のプロセスを制御し、新たな可能性を開こうとしている。」


■ 研究の目的と活動拠点

 美咲がカロンを見つめる。

 「彼らの目的は何?」


 カロンは淡々と答えた。

 「鉱石の進化を制御し、意識を持つ鉱石を“武器”や“資源”として活用すること。」


 本田が険しい表情を浮かべる。

 「つまり、妖精をただの研究対象ではなく、“利用する”つもりか。」


 「そういうことだ。」


 カロンは続ける。

 「エクス・ノヴァは、政府の研究機関ではないため、拠点も隠されている。彼らは都市の地下施設、貨物倉庫、さらには無人島の研究所など、さまざまな場所で実験を行っている。」


 隼人が鋭く問いかける。

 「今、彼らはどこにいる?」


 カロンは静かに答えた。

 「最近、活動が確認されているのは、とある海上施設だ。」


 美咲が驚いた表情を浮かべる。

 「海上施設?」


 「そうだ。政府の目をかいくぐるために、国境近くの公海上にある巨大な洋上研究プラットフォームを利用している。」


 本田が腕を組みながら低く呟く。

 「それなら、簡単に近づくことはできないな……。」


■ 迫られる決断

 隼人はノワールとルミエを見つめる。

 「……お前たちは、どうしたい?」


 ノワールとルミエは、お互いを見つめ合う。

 「ワタシ……マダ、ワカラナイ……」

 「ワタシモ……」


 カロンが静かに彼らに向き直る。

 「お前たちが選ぶ未来によって、世界は変わるかもしれない。」


 本田が深く息をつく。

 「まずはエクス・ノヴァの情報をもっと集めないと、動きようがないな。」


 美咲が端末を開き、情報を精査する。

 「海上施設に接近するには、方法を考える必要があるわね。」


 カロンはゆっくりと頷いた。

 「手段はある。だが、それには準備が必要だ。」


 隼人が強く頷いた。

 「なら、動こう。政府とは違う、もう一つの脅威……エクス・ノヴァの正体を突き止めるために。」

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