死を見る人たち

ツヨシ

第1話

友人と遊びに行った時のことだ。

車で目的地に向かっていた。

運転は友人で俺は助手席だった。

そして山道に入り、しばらく走った時のことだ。

俺たちの前を軽自動車が走っていた。

そして緩いカーブに差し掛かろうとしたとき、反対車線のトラックがセンターラインをオーバーしてきた。

「うわっ!」

友人は反射的に対向車線にハンドルを切った。

しかし前の軽自動車は反応が遅れた。

トラックと正面衝突してしまったのだ。

「あちゃーっ」

路肩に車を止め、事故車を見に行った。

トラックはまだましだったが、軽自動車は悲惨の極みだった。

前半分が完全につぶれていた。

もちろん運転席を含む。

さっきまで人がいたはずのところがぺしゃんこなのだ。

「だめだな」

友人が小さく言った。

俺もそう思った。

トラックの運転手がふらつきながら降りてきた。

友人が道端に運転手を座らせた。

運転手は茫然とした顔でつぶれた軽自動車を見ていた。

友人が警察と救急を呼んだ。

その時である。

俺は気づいた。

道の端ぎりぎりに、たくさんの人が並んでいるのを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る