第7話『通学路のマンホールから、味噌の香りがする』

 その日は、いつも通り学校へ向かっていた。

 ただひとつ、違っていたのは――


 通学路のマンホールから、異様に味噌の香りがしていたこと。


 ***


「……え、今日の給食、味噌ラーメン?もう匂ってる?」

 なんて思ってたけど、日に日に香りは強くなり、3日目には信州味噌か赤味噌か分かるレベルになっていた。


 ***


 ある朝、我慢できずにマンホールのフタをちょっと開けてみた。


「やめとけ!鼻が発酵するぞ!」


 と突然現れたのは、謎の老人。

 名を「ぬかじぃ」と名乗る。

“発酵の番人”らしい(肩に納豆を乗せている)。


 ***


 ぬかじぃ曰く、マンホールの下では今――


《味噌派閥と醤油派閥が、地下で全面戦争中》




 味噌勢力は「コクと栄養の支配」を狙い、

 醤油軍は「染みる力こそが正義」と主張しているらしい。


 ***


「だが今、バランスが崩れた……“白味噌の裏切り”によりな」


「裏切りって何!?味噌でドラマチックやめて!!」


 ***


 そして突然、マンホールの中から、

 **どんぶりに乗った“しゃもじ型の通信機”**が飛び出してきた。


「至急、援軍を!敵は麹を解禁しました!!」


「なにそれこわい!!解禁していい麹なの!?」


 ***


 ぬかじぃは僕の肩を掴み、こう言った。


「おまえ……いい鼻をしておる。味噌の未来は、おぬしに託す!」


「いや、託すな!俺ただの中学生だよ!?あと鼻で判断すな!!」


 ***


 結局、僕はそのまま**“味噌の調香師見習い”**として地下発酵同盟に登録されることになった。


 ***


 登校中のマンホールの上で、今日も味噌の香りを嗅ぎながら思う。


「せめて通知表に“発酵5”とか書いてくれよ……」



 ***


 完(味噌汁は、毎朝地上から送られてくるらしい)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る