星継のレガリア
星乃 詠人
第1話 星降る夜に目覚める刻
夜空には無数の星が瞬いていた。その光は、遥か彼方からの旅路を経て、この地上に降り注ぐ。しかし、彼——篠宮蓮(しのみや れん)にとって、それは単なる幻想に過ぎなかった。
篠宮蓮は、17歳の高校生。都心から少し離れた町に住み、毎日を無難に過ごしている。特別目立つこともなく、勉強も運動も人並み。そんな彼が、運命の夜を迎えることになるとは、この時点では知る由もなかった。
その夜、彼は奇妙な夢を見た。広大な星空の下、自分が宙に浮かんでいる。下を見れば、地上は闇に包まれ、何も見えない。ただ、頭上には果てしない光が広がっていた。
「目覚めの時は近い——」
どこからともなく響く声。その瞬間、蓮の身体は急激に落下し——目を覚ました。
息を整えながら時計を見ると、午前3時を少し過ぎたところだった。夢にしてはあまりにも鮮明だった。妙な胸騒ぎを感じつつ、再び眠りにつこうとした——その時。
窓の外、星空に不自然な揺らぎが生じた。まるで、水面に小石を投げ込んだように、空間が歪む。そして、その中心から現れたのは——ひとりの少女。
白いローブを纏い、長い銀髪をなびかせた少女は、ふわりと宙に浮かびながら蓮を見下ろしていた。その瞳は深い蒼で、星の光をそのまま閉じ込めたような輝きを放っている。
「——ついに見つけた。選ばれし者よ」
少女は静かに微笑む。
「私の名はセラフィナ。あなたが、この世界を救う鍵——『星の継承者』ね」
蓮の心臓が高鳴る。現実離れした光景に、夢の続きを見ているのではないかと思った。しかし、冷たい夜風が頬をかすめる感触が、これは紛れもなく現実であることを告げていた。
「俺が……? 世界を救う……?」
彼の呟きに、セラフィナは静かに頷いた。
「この星の運命は、あなたに託されたのよ」
その瞬間、蓮の周囲に光が集まり、彼の体を包み込んだ。強烈な輝きが視界を覆い尽くし——彼の運命が、大きく動き始める。
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その後、光が消え去ると、蓮は自分の部屋の中に戻っていた。まるで何もなかったかのように、静寂が広がっている。しかし、確かに少女——セラフィナはそこにいた。
「話したいことがたくさんあるわ。だけど、まずは信じてもらうために、証拠を見せるわね」
そう言うと、セラフィナは手をかざした。次の瞬間、彼の目の前に小さな光の球が生まれ、ふわふわと浮遊し始めた。
「これは……?」
「星の力の一部よ。あなたの中にも、この力が宿っているの」
蓮は息をのんだ。目の前の光は、まるで生きているかのように脈動し、彼の手のひらへと吸い込まれるように流れ込んできた。
「うっ……!」
瞬間、彼の体に電流が走るような感覚が広がった。全身を駆け巡る未知の力——それはまさに、夢で感じた光と同じものだった。
「これが……俺の力?」
「ええ、あなたは『星の継承者』として、この力を使うことができるわ。でも、まだ覚醒したばかり。訓練が必要ね」
蓮は戸惑いながらも、胸の奥で何かが目覚めたような感覚を覚えていた。
「これから、どうなるんだ……?」
セラフィナは静かに微笑む。
「あなたが何を選ぶか次第。でも、世界の運命があなたにかかっていることは間違いないわ」
窓の外では、まだ星々が煌めいていた。蓮の運命は、もう元の平凡な日常には戻れない——そんな確信が、彼の胸に芽生え始めていた。
こうして、彼の新たな旅が幕を開ける。
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