以心電心

小狸・飯島西諺

短編

 まあ。


 最近のSNSで時折見られる投稿に対して、物申したいことがないわけじゃねぇ。


 普段は温厚で通っている俺だ。誰がどんな投稿をしようとそれは俺には関係がないし、それを見て不快になったとて、快不快は俺の中の感情であり、そいつに責任転嫁するつもりはねぇ。俺の感情は、俺のものだからな。それは誰からも侵害されるものじゃねぇし、何より踏み込ませるつもりもねぇ。


 ただ。


 そういう奴については、一体どういう神経してんだ、と思わずにはいられねぇ。


 勿体もったいぶってないで早く話せって?


 悪いな。俺も作家志望の端くれなもんでな。小説ってのは、婉曲と迂遠の連続なんだよ。先の展開が楽しみにドキドキワクワクする文章ってのは、この「勿体ぶる」ってのを、作家が上手く描写しているからなんだと、俺は思ってる。


 いかに「勿体ぶ」れた者が、面白い小説を書けるんだ。


 なんて、そんな風に言っちまうと、いささか言い過ぎかもしれねぇな。それこそ、批判が来てもおかしくねぇ内容だ。まあ、元々俺が話す内容なんてマトモじゃねぇんだから、そこはある程度の覚悟を持って聞いて欲しいぜ。


 俺の言いたい「そういう奴」ってのはだな。


 何かの意見を述べる際、当たり前のように、漫画や小説の一節を「引用」して、さも自分の見解のように添付して投稿している輩のことだ。


 そもそも著作権侵害だよな?


 いや、俺も法学部に進学するつもりは毛頭ねぇんだが(俺は理系志望の高校生だ)、勝手に人の漫画や小説の写真を撮ってネットにアップすることって、何らかの法律に引っ掛かると思うんだが、どうなんだ?


 電子書籍がここまで人口に膾炙した今の時代、スクリーンショットに対する対策も、取られていると聞くぜ。


 ただ、そういう著作物、創作物に対する法整備がきちんとなされているのか――ってのを考えると、どうも分からねぇというのが正直なところだ。実際、ネット上ではどいつもこいつも簡単に、漫画や小説の一節を引用して、写真に収めて自分のもののように投稿しているわけだからな。正直、信じられねぇ。


 いや――法律は、良いんだ。


 良くねぇけどな?


 先も言った通り、俺は法律には明るくないので、そういう類の批判は、別のもっと賢くて法律に詳しい奴がやれば良いと思う。俺が外野からごちゃごちゃ言うより、その方がよっぽど建設的だし、事態の解決に繋がると思う。


 ただ、俺が許せねえのは。


 自分の意見を、他人の創作物を借りて表現しているというその一点だ。


 いや、共感するのは分かるぜ?


 俺だって、漫画や小説を読んで、共感することはある。「あー、こういう状況現実であるなぁ」とか、「この登場人物には死んでほしくねぇな(俺がそう思うキャラは大概が死ぬ)」とか、「このキャラ良い事言うなぁ」とか、そう思うことは、むしろ多いと言って良い。


 だけど。


 それを自分の意見を主張するための道具として利用するのは、違うんじゃねぇか?


 漫画も小説も、娯楽だ。究極的には、楽しむために作られている。そりゃ、胸糞展開とか、陰鬱描写とか、グロテスク表現とかもあるだろうが、目的は一つ、読者に読まれることだ。読者が読んで、何かを思う。そうして作品が作品たり得ると、俺は思ってんだよ。


 それを――それを、だ。


 個人の思想や主張を周囲に理解してもらうために、作者の許可なく勝手に利用し、それを自分の見解の補助として使うってのは、一体どういう了見でやってやがるんだ? 


 なあ、お前だよお前。


 お前作者に許可取ってそれやってんのか?


 人が作ったものだぞ、それ。


 お前なんかの主張のためにあるんじゃねぇぞ。


 借り物でツギハギの何かじゃなく。


 言いたいことがあるのなら。


 伝えたいことがあるのなら。


 理解してほしいことがあるのなら。


 お前の言葉で伝えろよ。


 お前の意見だろうが。


 そう思っちまうな。


 なーんかな、そういう「創作物に対する認識」が、SNSが普及して、人々にツールとして波及していくと同時に薄れていっているように思えてならないんだよな。


 ぶっちゃけ、今話題のAIだのなんだのよりも、俺は深刻な問題なんじゃねぇかと思うぜ。


 こういうことを臆面もなく言うとだな、必ずと言って良いほど「いや、そんな細かく法律に書いてないじゃん!」「禁止されてないじゃん!」「他の奴だってやってたじゃん!」とか、そんな子どもの言い訳みてぇなことを述べてくる奴もいやがる。まあ、そういう奴がいるからこそどんどん規制が厳しくなるんだろうな。「規制が無きゃ守れない!」って言うんなら、規制が増えて当たり前だ。逆に言うと、そんなことも想像できない莫迦ばかが、この世には増えているっつうことだ。由々しき状況だな。


 まあ。


 俺一人の力じゃ、どうすることもできないってのも事実だ。


 積極的に著作権侵害する莫迦共を見ながら、そんな大人にはならないようにしようと思いながら――今のうちから、勉学に励もうと思うぜ。


 そして、俺自身も、いつまでも心得ておきたい。

 

 自分の言葉は、気持ちは、心は。


 自分で伝えよう、って。




(「しんでんしん」――了)

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