紙人形の降霊術

紙人形の降霊術

これは僕の人生のなかで、おそらく1番恐ろしい思い出だろう。


あれは、中学3年生の夏の頃だった。その日、僕たちは宿題が終わっておらず、居残りをさせられていた。教室には、僕と友人あとの人たちはクラスのいつも固まっている男女2人ずつの陽キャ達4人。計6人だった。


暑い教室の中勉強も進まず、陽キャの1人が言い出したんだ。「紙人形の降霊術をやろう」って、この遊びは当時中学校全体で流行っていた。


人数は6人が好ましく、紙人形を用意しそれを6人が指で掴む。僕は知らないが、その時に呪文を言い、一斉に引っ張る。そして、それぞれが持っている紙の大きさで勝敗が決まる。1番大きいものが勝者で、1番小さいものが敗者。1番小さかった者は魂を持ってかれ、1番大きかった者は一つだけ願いを叶えることができる。「しきたち様」「しきたち様」と言ったのちに、願い事を言えばそれが叶う。


出所が分からず、成功したという噂も聞かなかったため、面白半分で始まったことだった。僕もなんの警戒もしていなかった。


僕たちは陽キャ達を強制的に参加させてきた。


儀式は順調に進んだ。陽キャ女子がスマホを見ながら、呪文を唱え、一斉に髪を引っ張った。4人ほどが誰の方が大きいのか分からない状態だったが、1番大きい者と1番小さい者は一目瞭然だった。1番大きいのは、陽キャ男子で、1番小さいのは僕の友人だった。友人は少し青ざめていた。


その直後だった。カラスが窓を突き破り、友人の頭にクチバシから突っ込んでいった。地面が血に染まってゆき、クラス中に悲鳴が響き渡る。そんななか、勝者の男子ひとりが、「しきたち様」「しきたち様」と唱え、「俺を!大富豪にしてください!!」と悲鳴もを掻き消すほどの大声で願った。


友人の目から光が消え、クチバシと頭の境目から脳みそが見える。


次に皆が見た景色は病院の天井だった。長い説教は頭に入らなかった。


勝者の男子は、心臓発作で死んだらしい。


偶然なのか、49日後にある企業が膨大な成長を遂げた。


敗者と勝者以外のメンバーは今も普通に暮らしている。

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宜《うべ》 ホラー短編集 ZIN @ZIN373

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