第12話

「えー、今日は皆さんに大事な話があります」

事件が起きたのは、誕生日会から数日経った日のことだった。

学年集会で学年主任の石橋先生が難しい顔をしながらみんなを見渡して言った。

「実はな、うちの学年の東海梨子の上靴うわぐつがなくなってな、誰か知っている人がいれば教えてほしい」

石橋先生が話し始めると、いつも元気な梨子ちゃんが少し泣き始めた。

「え、梨子の上靴がなくなったって、盗まれたってこと!?」

「だとしたら普通にヤバくない?」

「高校生にもなって上靴盗むとか、マニアック過ぎるだろ!」

途端に、教室内はざわめき始めた。

(そんな、、、梨子ちゃんの上靴が、、、)

「みんな、静かに。まだ詳しいことは分かっていないので―――」

「はーい、先生〜」

その時、誰かが先生の言葉を遮って高々と手を挙げた。

「どうした?」

「私、東海さんの上靴を隠した犯人を知っていますよ〜」

そう言って、立ち上がったのは少し前に私に水をかけてきた子だった。

思いもよらない告発に、クラスが騒がしくなる。

「犯人を知っているって、どういうことだ?」

「昨日の放課後、ある人が東海さんの上靴を持っているところを見ましたの〜」

ギクリとしたのは、彼女が私の方を見てニヤリと笑ったから。

(まさか、、、)

「私が見た犯人は白露さんで〜す」

私の嫌な予想は的中。

ハッキリと言い切った彼女は私を指差した。

「白露が?」

「はい!間違いありません!」

次の瞬間、石橋先生を始めとした学年全員の目線が私に向けられる。

顔色を青くした私は、咄嗟に言い返す。

「わ、私はそんなことしていません!」

私と仲良くしてくれた何人かの子は援護えんごしてくれたが、私と関わりのない子達の中からは疑念ぎねんの声。

それに追い打ちをかけるように、、、

「私も白露さんが持っているの見ました!」

「私も!」

私を嘲笑った女子達が口々に言い出した。

「どうなんだ?白露」

「本当にやっていません!」

さらに、クラスの男子がこんなことを言い出した。

「それがマジなら、白露怖すぎね?」

「あー、それなら桜井兄弟に近付いたのも計算!?」

「えー、大人しそうに見えるのにー」

あっという間に、クラスは私を責める声でいっぱいになった。

もう、最悪!

血の気が引いて、足が震える。

「ちょっと待って、未来ちゃんがそんなことするはずないよ」

「未来は、人を傷付けることは絶対にしないから!」

凛とした声が教室中に響いた。

声を上げたのは、蓮くんと真依ちゃんだった。

震える私の手を、蓮くんは握ってくれた。

(蓮くん、、、真依ちゃん、、、)

すごく、嬉しかった。

「馬鹿じゃねぇの?」

その時、力強い声が隣のクラスから聞こえ、手を挙げたのは悠くんだった。

「あ、思い出しました。俺が上靴を隠しました」

一瞬で教室中がシーンと静まり返った。

全員が何も言えなくなって、ポカンとしている。

「さ、桜井。それはつまり、、、東海の上靴を隠したのは自分だって言いたいのか?」

「はい」

堂々と答えた悠くんに先生までも驚いて固まった。

「でも、隠し場所は忘れました」

だけどそこまで言って、悠くんは一部の女子達を睨み付けて、、、。

当の私は頭が真っ白。

何が起こったのか、よく理解出来てなくて。

「今の話は本当なのか?」

「はい、本当です」

「はぁー、お前な、、、もういい。桜井は放課後、職員室に来なさい。場合によっては、停学処分になることも覚悟しとくように」

(え?)

石橋先生が続けて言った言葉に、私は目を丸くした。

(悠くんが、、、停学になってしまうかもしれないの?)

嘘でしょ?

動揺を隠せない私を他所に、悠くんは堂々とまた言い切った。

「蓮くん、、、」

「うん。悠斗は隠してなんてしていないよ。双子である僕が保証するから大丈夫だよ」

悠くんは、言葉が少しキツイけど、本当は優しいってこと知ってる。

「あ、あの―――」

いてもたってもいられなくなった私は、思い切って口を開いた。勇気を出して「悠くんは犯人じゃない」って言おうとしたんだけど、、、。

キーンコーンカーンコーン。

授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

ハッとして目を開けると、ガシガシと頭を搔く石橋先生の姿が見えた。

「は〜、せめて上靴が見付かってくれさえすれば、、、」

先生は残念そうにぼやく。

(せめて上靴さえも見付かれば、、、)

結局、学年集会はお開きになった。

私は無言で座った悠くんを見て、拳を握り締めた。

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