第9話たったの五人か?
「さぁ、ボコボコにしてやんからな?」
そう言うといかにもという感じでこちらに近づいてきながら拳をパキパキと鳴ら…鳴ってないからな?
男子生徒達の数はひぃ~ふぅ~みぃ~、5人か。
「たったの五人で俺とやろうと思ってんの?」
「はあっ?」
「こっちは五人だぞ?」
「一人でどうにかなると思ってんのかよ?」
本当は暴力なんていけないんだけど、相手は五人。どうせ止めるように言ってもこんな輩には聞かないだろうしな。
──みせてやる!
♢♢♢
「──口だけかよ?こっちは五人もいるんだ。本当に敵うと思ってたのか?」
「そうは言うけどこっちも一人やられたけどな?」
「うっせー。黙ってろ」
「…俺ばかり狙いやがって…」
「ぷっ…だせぇな?」
「ああ?」
──はい。駄目でした。五人は流石に卑怯だよね?漫画の主人公みたいにいくかってぇ~の。まあ、それでも一人は倒したよ。すでに立ち上がってるけど…。でも凄くねっ!?相手の一人に集中的に攻撃してやったとはいえ一度は倒したんだから。
とにかくだ。一人は倒したから俺はすでに地べたに這いつくばっている。抵抗すればするほどやられるだろうしな。
「こいつにやられた分…もっと痛めつけてもいいよな?」
なんですと!?倒れてる者に容赦なくねっ!?コレ以上はやり過ぎですぞっ!?
──ガチャっ!
「お願いします!」
「お願いするしっ!」
屋上のドアが開くと同時に女性らしき声。
「──なっ…」
「なんだ…!?そっ…がはっ…」
「おのっ!?いてぇー!?」
「ぐえっ…」
「くっ…ゲホッ…」
「あばっ!?」
次に聞こえてきたのはボコしてた奴らの声。直後こちらに慌てて駆け寄ってくる足音が二つ。
「大丈夫しっ!?」
「大丈夫ですか!?」
何がなんやら分からないので上半身を起こすと曽根崎さんと小野寺さんの姿が視界に入ってきた。
「どうして二人がここに…?」
「「それは──」」
二人が俺の質問に答える前に声が掛けられる。そちらに視線を向けると女性警護官の人達が俺をボコした奴等を制圧していた。
「小野寺様。曽根崎様。私達は取り敢えずこの馬鹿達を職員室へ運んできますので、私達が戻ってくるまでここに居て下さい」
「あっ、はい。宜しくお願いします」
「宜しくっしよっ」
女性警護官の人達は馬鹿達を連れて職員室へと向かった。そうなると屋上に残されたのは俺と小野寺さんと曽根崎さんの三人になる。警護官一人も残っていないけど大丈夫なのかよっ!?俺は男だぞ?突然狼さんになったらどうするんだよ…。
まあ、そんな事はしないけど…。
「えっ…と…どうして二人はここに?」
「ええとですね、もともと今日は隼君に優花ちゃんが用事があったんです。だけど…授業が終わると同時に隼君が慌ててどこかへと向かって行ってしまって…鞄は置かれてあったので、優花ちゃんが授業が終わるのを待ってから隼君の事を探したんですよ。そしたら…」
なるほど。そのおかげで怪我という怪我もなく助けてもらえた訳か。あっちこっち流石に痛いは痛いけど…。
それにしても小野寺さんは曽根崎さんの事を名前で呼んでるんだな。いつの間に仲良くなったんだ?それに曽根崎さんは俺に用事があるのか?
ああ…違う違う。先にこれを言わないとな。
「…まずはお礼を言わせて欲しい。助けてくれてありがとうございます」
「いえ、私はお願いしただけなので。お礼は警護官の人達に」
「奏っちの言う通りしょっ!それにお礼を言うならあ~しの方しっ!」
「お礼…?」
もしかして…
「奏っちから聞いたっしょっ…。あの時…体育の時に…あ~しの事を中村っちに伝えて手を差し伸べるように仕向けてくれたのはあ~たなんでしょ?」
あ~たって…あなたってだよな?
小野寺さんはよく気がついたもんだ。まあ、隠してる訳じゃなかったんだけど…一応そうだと伝えた方がいいかな?
「ええと…一応…先生に言いはした──」
──そう伝えた瞬間目の前が暗くなり何か柔らかいものに押しつぶされるような感触。
「むぐぐぐっ──」
「奏っちに聞いた通りあ~ただったんだねっ!?あ~し知らなくて…中村っちとばかり思っててっ…」
「あ、あの~…優花ちゃん…?」
「何、奏っち?今取り込んで…」
「優花ちゃんにとって隼君って…恩人になるわけだよね?」
「そうだけど…?」
「そ、その恩人が優花ちゃんの胸の中で息ができなくて痙攣起こしてるけど?」
「あ~~~~たっ!?」
よく、漫画やらで出てくるじゃん…。おっぱいに押し付けられて息が出来なくて窒息しかけるって奴…。
あれって…ホントだったんだな…。危うく死にかけるところだったわ。
ただ一つだけ言わせてくれ…。制服ごしでも大きなおっぱいは偉大だったと…。
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