文学の未来のために

 百年後の文学者が、タイムマシンに乗って、即売会にやってきた。

「協力してください、文学の未来のために!」


 彼の世界では、小説家AI「カクヨ」が売れっ子になり始めているらしい。

 この百年間に出版された小説を丸ごと学習して、作家としての腕をめきめきと上げているんだそうな。

「……という状況ですので、人間が書いた小説の数を減らしたいのです。雑多な作品はできるだけ少なめに!」

 そういうことなら、仕方ない。これからはレベルの高い作品だけを売るようにしよう。


 結果。

 たった20年で、「カクヨ」は人気作家になった。

 あいつは誰よりも純度が高い作品を書く。人間のペンで対抗したいものだが、どうも小綺麗こぎれいさでは及ばない。


 俺たちは未来人に文句を言いに行く。

「話が違うじゃないか。お前が言うとおりにしたら、AIに乗っ取られるのが早まったぞ!」

 だが、百年後の文学者は、きょとんとして言い放った。

「えっ、そのほうが良くないですか? 文学の未来のために」

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