第12話 二人の気持ちとスタート地点

 果林の気持ちに全く気付いていなかった事に大文字社長が大笑いして、バンバン俺の肩を叩いて来た。


「ガッハッハッ。お前は自分に向けられ好意については鈍感なところがあるからなぁ!」

「ぐっ!」


 言い返せないでいる俺に、更に社長は説明をして来た。


「新が婚約破棄されたあの日、「私があらっちゃんを支えたい」って言われてな。

 番組での告白と婚約破棄された式場で予約していた時間通りに式を挙げる事を提案されたんだよ。

 流石に俺も驚いたが、上手くいけば、このドラマティックな展開に逆に視聴者の支持を得られるんじゃねーかと思ってな」


「でも、これからアイドルからタレントに転向して頑張って行こうって時期に交際まではまだしも、婚約までするのは、あまりにもリスクがっ……」


「そりゃ、リスクはあるだろうが、本人に「芸能界を引退する覚悟がある」とまで言われちゃ、どうしようもねーしな。こっちも一か八かでノッてみる気になったわけよ」


「えっ。引退まで覚悟って、本気か? 果林。この仕事で成功する事はお前の夢

じゃなかったのかよ!?」


 社長から果林の気持ちを聞かされ、驚いて問い糾すと、果林は迷いない瞳で頷いた。


「うん。確かに、芸能界は学校でも家庭でも居場所のなかったウチが、唯一輝ける場所で、ここでお仕事を成功させる事はウチの大切な夢だよ? だけど、この場所に連れて来てくれたのも、ここまで支えてくれたのも、あらっちゃん。

 どんなリスクを背負ったとしても、これからは、あらっちゃんと幸せになりながら、頑張っていきたいの! 」


「果林っ……。それは有難いけど!」


 俺の為に行動を起こしてくれた果林の気持ちを思い胸が熱くなりながら、まだ受け入れ難い俺に、果林は涙目になって叫んだ。


「分かってる! あらっちゃんが、番組での告白と婚約を受け入れてくれたのは、この状況で、マネージャーとして看板アイドルタレントの人気を最低限守れるようにって考えてくれただけだっていうのはっ!

 あらっちゃんは、清楚な黒髪の女性が好きなんだもんねっ?

 けど、それでも、一生懸命あらっちゃんの好みに合わせて、好きになってもらえるように頑張るから!」


 辛そうな表情で、おかしな事を言ってくる果林に、俺は目をパチクリさせた。


「いや、一体何を言ってるんだ、果林? 好きか嫌いかで言ったら、俺、お前の事大好きに決まってんだろーが! 寧ろ惚れ抜いていると言ってもいいっ!」


「ぐふうっ……!////」


 当たり前の事を言ってやっただけなのに、果林は顔を真っ赤にしてその場に崩れ落ちた。


「何驚いてるんだ? 14の時から、お前の面倒を見て来ているんだぞ? そりゃ、情もわくって! 

 金髪に青い目! 理想的なボディライン! 天使のような愛らしい外見に、ちょっと生意気だが素直な性格! いつも一生懸命で、どこか儚げな、仕草の一つ一つに目が離せない!

 まさに、光輝くスターになる為に生まれて来たような魅力全開の女の子!


 それがお前だ、果林! 俺はお前を愛しているっっ!!」


「う、うふぅっ!! ////ホラ、そーゆートコだよ!! あらっちゃぁんっ!!」


 人差し指を突き出して、俺が自信満々に宣言してやると、果林は両手を当てた顔から盛大に湯気が出ていた。


「シラフで、聞いているのが恥ずかしくなるような甘いセリフを吐いちゃうくせに、裏では、恋人とか婚約者とかポンポン作ってぇっ!」


 めちゃくちゃ褒めてやったのに、何故か果林はおかんむりで、俺は困って頬をポリポリと掻いた。


「いやぁ、ポンポンは作ってねーよ? そんなモテねーし。それに、お前は俺の聖域なんだから、手を出せる訳ないだろう? 大事に守って……」


「そんなのいらない! ウチはもう大人の女性なんだから、あらっちゃんに、セッ◯スする対象として見て欲しいの!」


「セッ! // セッ◯スとか言うな! 恥ずかしいセリフ言ってんのはお前だろ! 果林!」


「「「新(さん/先輩)……。果林(ちゃん/さん)……」」」


 お互いによく分からない方向に言い合いになり、収拾がつかない状態で、佐々木マネージャー、他のルミナスメンバー二人が苦笑いで見守られる中、大文字社長がパンパンと大きく手を叩いた。


「ハイ、お前らそこまで! お互いに想いはあれども、新は拗らせてて、果林は

 女としてイマイチ自信が持てないのはよく分かった」


「「……!」


 指摘され、目を見開く俺と果林を見て、社長はニカッと笑った。


「まぁ、ちょうどいいじゃねーか。卒業間近とはいえ、果林はまだアイドルなんだから、卒業コンサート終わるまではファンに操立てて、お前ら健全な関係でいろ?

 その間にお互いの絆を深めて、式までにはコアなファンも含めて世間が祝福してくれるぐらいにおしどり夫婦になってみせろや!

 お前らと一蓮托生のキラ星プロもルミナス☆ミも、 それを見届けてやるからな?」


「「社長……!」」


 大文字社長にそんな事を言われ、俺と果林が目を瞬かせていると、佐々木さんとルミナス☆ミのメンバーも笑顔で声をかけてくれた。


「はい。 私は新さん、果林さんなら素敵なご夫婦になれると思いますよ?」


「「私達も新さん&果林ちゃんお似合いだと思う! ファンの皆もきっと納得してくれるよ。私達も応援するから!」」


「佐々木さん。アヤ(ちゃん)……。舞弓(ちゃん)……」


 計画を了承して進めた社長だけでなく、果林に何かあれば迷惑をかけてしまうだろう、三人からもそんな風に言ってもらい、俺と果林は顔を見合わせた。


「あらっちゃん……」


 こちらに訴えかけるように青い瞳をうるうるさせる果林に、俺は大きく頷いた。


「分かってるよ。もうこうなったら、後戻りは出来ないって! お前が俺を救う為にここまで人生かけてくれたんだ。


 俺も、お前をアイドルタレントとして守りながら、これからは花嫁としても幸せに出来るよう努力していくよ!」


「……!! /// うん、あらっちゃん、嬉しい!」


 俺達は自然と笑顔になり手を重ね合わせた。


 果林の手の温もりは、婚約破棄されてから、ずっと見ないようにしていた心の深いところに出来た傷をひりつかせたけれど、同時にその傷が少しずつ快方に向かっていくような希望を抱かせた。


「新よく言った! 面接の時にお前が言った言葉、「御社と御社に所属するタレントの為に人生全てを捧げうつ覚悟があります!」を文字通り全うする事になったな?」


「社長、それ、もう言わないで下さいよ!//」


 社長にからかわれて、俺が赤くなっていると、第二マネージャーの佐々木さんがクスクス笑った。


「ふふっ。そのマネージャー業にかける姿勢は私も新先輩を見習わなくっちゃですね?

 さぁ、では、話が円満に纏まったところで、皆さんそちらへどうぞ〜?


 果林さん&新さんの幸せ、それからルミナス☆ミの活動の成功を願って、社長がそちらにオードブルとシャンパンを用意下さってます!

 後は、食べながら話しましょう?」


 佐々木さんに移動を促され、(実は入って来た時から目に入り、気になっていたのだが)ソファー席のテーブルに用意されたパエリアに、ローストビーフに、アボガドサラダに、高そうな食事に俺も果林も目を奪われた。


「わぁっ! 社長、ありがとうございます!」

「おおっ。すごい。大文字社長、ありがとうございます!」


「さっきから美味しそうだと思ってたんですよね。社長、ご馳走様になりま〜す!」

「分かる〜。目でチラチラ追っちゃってたもん。社長、ご馳走様になりま〜す!」


「おう!たんと食って、景気つけろ?」


 舞弓もアヤも大喜びの様子で太っ腹な大文字社長に礼を言い、ソファー席についた。


 それからは皆でシャンパンで乾杯をし、大文字社長、佐々木さん、俺、果林も含めたルミナスメンバー☆ミは食事をつつきながらこれからの事を話し合う事になったのだった。



✽あとがき✽


 読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m


 今後ともどうかよろしくお願いします。

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