花ふぶき　🌸

三食に使ふプレートあたたけし

ベランダに塗料の缶や花ふぶき

やはらかに子の故郷の山笑ふ

雉鳴くや絹街道はこの地から

走り根のはしるちからや岩燕

本名を名乗ることなき燕かな

火山土の荒き風土に桑を摘む

蚕室の壁の騒めく茶の間かな

外出の億劫な日や鐘霞む

平穏にただ平穏に枝垂桃

たんぽぽに畦の余白のなかりけり

はるかなる空への思ひしやぼん玉

撫で肩に危く止まる春ショール

隠し湯へしづかに芽吹く山の道

水底に日を棲まはせて春の川

流れゆく音も清らに水草生ふ

一つ欲し懐中時計荷風の忌

ルンバより箒が手軽万愚節

のどけしや手作業の手の愉しげに

うこぎめし伯方の塩のよく効いて