第2話 continue・そして、サイは投げられた

仕事場から帰途に就くときに、駅から歩いて、混雑を通りすがっていた。地元に戻ってきたときの無条件の喜びって、実家が最強だという裏返しでもあり、しかし、年を食うと事情も異なってきた。

西出口の階段を降りると高架下のスーパーマーケットから出てきた紳士服の男性がいて、目の肥やしにした。

アタッシュケースから取り出したと思しいエコバッグの2段持ちである。つまり、マトリョーシカ人形のように「入れ子」になっているわけだ。ちょっとだけ、流行るように怨念を送った。

段々畑のような飾り雛とは大ちがいである。

ネステッド構造は、昨今、ひそかに注目されたもので、パソコンのフォルダシステムと同じで、ネットワーク・ツリーの表示系といえた。たとえば、自然界ではフラクタル状といって、人工衛星から雲の様子を観測するのにも一役買っている。

自宅に戻ると、電気のスイッチを押して、LEDのライトが静けさを物語った。

OL時代には、厨房に立つことに嫌悪感があって、くるぶしに青あざが出来たこともあった。母の呪縛があって、大学生でリケジョをやっていた頃までの自分が実家に縛り付けられているようで、息苦しかった。

そのためにも、仕事に打ち込む理由があって、スポーツバーで酒を引っ掛けるついでにこともあった。

ソファに腰掛けて、缶ビールを開けて、テレビを付けると、報道ステーションで「夫婦別姓」が報じられていた。

酔ったついでに悪態をついて、所得制限とテレ東にいた鉄の女に、心の中で罵声を浴びせかけた。まったく男の子みたいに、逃げんじゃねェぞ!という具合である。

私も考えて、パック寿司の「輝元」には勝てないような気がして、RF1で総菜を買い込んだわけなのである。

そんなわけあるかっ!

エコバッグから取り出した買い物で、ナンの生地は、塩味が効いていて、おいしいと評判だった。行きつけの総菜売り場が生き残りに勝つためには、もう少し、パック寿司と差別化できる「名物」が必要である。

これを業界では、万引きと呼んでいる。

うるせぇぞ!コノヤロー!





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