天使のような七姉妹とラブコメが始まった

暁貴々@『校内三大美女のヒモ』書籍

本編

プロローグ

第1話 天国から戻ってきたら

 ここはきっと天国だ。

 なぜなら俺は――鋭利な『包丁』でわき腹を突き刺されたのだから。


 筆舌に尽くしがたい熱と痛みが迸ったあと、徐々に力が抜けていった。


 ふわふわと雲の上で居眠りしているような、そんな心地よさ。

 やわらかな羽毛で全身を包まれている、そんな優しい感触。

 まっさらな景色が色づいていき、絵の具を散りばめたような色彩に溢れ、視界が徐々にクリアになっていく。

 そよ風とたわむれる草花が整然と生い茂った庭には、赤い屋根の家が一軒。

 曲がりくねった自然石の小道を進んで、アーチ状の玄関をくぐり階段を上がれば、そこには『七人の姉妹』が鎮座している。


 テカテカと光る総革張りのソファは俺と彼女たちでぎゅうぎゅう詰めだ。

 生まれたままの姿ですやすやと寝息を立てるあどけない姉妹たちの、体温が、じんわりと伝わってくる。


 このあと滅茶苦茶しました――を、終えた後のような、あまく、せつない余韻。


 ふと窓の外をのぞけば、白いペンキで塗られたウッドデッキが、どこまでも広がっている。


 青空に浮かぶ雲は綿菓子みたい。

 床板の中央には、お洒落なテーブルと椅子が二組。

 ガラス製の天板の上にはスコーンやクッキー、カップケーキなどの洋菓子が並び、紅茶の香りに包まれている。


 幸せな風景を切り取ったような、やさしい世界。


 でもこれが夢だとわかってしまうのは――俺自身が、七姉妹にふさわしくない、『穢れた存在』だと自覚しているから。


 おそるおそる目を開けて、死後の世界を拝んでみた。


 閻魔大王の姿はなかった。

 つまりは地獄じゃない。

 

 ここはきっと天国だ。


 なぜなら俺の視界いっぱいに――


 天使みたいな。

 いや、天使よりも美しいかもしれない。

 

 七人の姉妹の顔が映り込んでいたのだから――。





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