遊び人ギャルの性奴隷

新原

第1話 終わりと始まり

 この日の広永ひろなが和臣かずおみは魔が差していた。


 高校生になって2ヶ月が経とうとしているが、新しく出来た陰キャの男友達とつるむだけの色褪せた日々がイヤだった。


 カノジョ居ない歴=年齢。

 別にまだ15歳なのだから焦る必要もないが、クラスや学年内では続々とカップルが誕生しているし、上級生の男女が手を繋いで帰る姿もよく目撃したりする。

 そんな光景が羨ましいけれども、自分には女っ気などひとつもない。


 だからそんな鬱憤を晴らさんとばかりに、この日の放課後、和臣は誰も居ない教室で篠原しのはらゆずの体操着を漁って匂いを嗅いでいた。


 篠原柚とは、同じクラスのギャルである。

 容姿は金髪セミロング。

 一応中学から一緒だが、別に友達などではない。

 柚は中学の頃から遊んでいた噂があり、今は新しく出会った陽キャ男子たちを何人もセフレにして楽しんでいるという噂もある。

 

 そんな遊び人の体操着くらい匂いを嗅いでオカズに記憶してもバチは当たらないだろう、という最低最悪の思考回路のもと、和臣は柚のハーフパンツを顔に押し付けている。


 教室は無人だがそこかしこで部活が行われている現状、気を付けなければバレかねない。

 だから細心の注意を払ってそんな行為に及んでいたつもりだが、


「――は? お前何してんの?」


 夢中になり過ぎて、教室の出入り口に1人分の影が差していることに気付けなかった。

 ハッとしたときにはもう遅すぎた。


「ちょっ、お前それあたしの体操着じゃん! は!? キモ過ぎ!」


 そう言ってズンズン迫ってきたのはまさしく篠原柚その人であった。

 ブラウスのボタンは上から二番目まで開けられていて、スカートはもうパンツが見えそうなくらいのミニ。

 そんな彼女は和臣に最接近したところで和臣の腹を蹴飛ばしてきた。

 和臣は尻餅をつく形で倒れたところに金玉グリグリの追撃を食らって呻く他なくなる。


「ぐぁぁぁぁ……!」

「お前何してんのマジで?」

「ご、ごめんっ……ごめんなさい……!」

「謝って済むことじゃねーし。あたしがたまたま忘れ物取りに来なかったらこのままどうするつもりだったんよキショすぎ。あーあ、どうしてくれよっかなぁ」


 柚は金玉グリグリを続けながらスマホを取り出していた。

 和臣の目線からだと柚の黒ショーツが丸見えだったが、そんなモノを堪能する余裕はなかった。


「よーし決めた。恥ずかしい写真撮ってクラスのグループLINEにバラ撒く。お前今後の学校生活はずっと針のむしろになって生きてけよw」


(……終わった)

 

 和臣は絶望した。

 自業自得なのでしょうがないが、魔が差した自分に嫌気が差す。

 震える口元で、和臣はとにかく謝罪を紡ぎ出してゆく。


「ご、ごめん……なんでもするから、それだけは……」

「黙れよ。こんなことしてなんのお咎めもなしでいいわけねーじゃん」


 道理である。

 悪いのは和臣であり、正義は柚にある。

 もはやどうしようもない状況だ。


「ほら、とりあえず脱げよ」

「……脱ぐ?」

「下半身、全部脱げ」

「――っ」

「言ったじゃん。恥ずかしい写真撮って晒すって」


 柚は怒りの表情からニヤニヤした笑顔に変わり始めている。


「ほら、はよ脱げって。足どけてあげっから」

「ま、待ってよ……ここで脱いでもし人が来たら……」

「キモいこと堂々としてたくせにそんなの気にすんのかよ。お前広永だっけ? 中学の頃から陰キャ過ぎてホンマキモいよね。なんで生きてんの?」


 半笑いでなじられる。

 和臣は返す言葉がなかった。


「まあいいや。じゃあ場所変えてあげる。廊下の端に空き教室あったよね。先にそこ行ってろ。あたしは友達にちょっと用事出来たって連絡しなきゃだから」


 そう言われ、和臣は恐る恐る廊下に出た。

 このまま逃げてしまえば、と思ったが、体操着のことを教師陣に報告されたらそれこそおしまいだ。

 クラスの中で馬鹿にされ続けるだけの方が、まだマシだと思った。


「よし、じゃあほら脱げ」


 空き教室に柚も到着し、命令された。

 本当に脱がなきゃいけないのか、と葛藤するが、


「脱がないなら先生たちに言うけど? それをやらないあたしって優しくない?」


 などと言われ、ベルトに手を掛ける他なかった。

 そしてゆっくりと制服のズボンを下ろし、黒のボクサーパンツをあらわにさせる。


「手ぇ止めんな。下着もはよ下ろせ」


 柚がスマホを構え始めている。

 すでに撮影は始まっているのだろう。

 和臣は深呼吸を一度行い、それからひと思いにボクサーパンツをずるりと下ろした。

 その瞬間だった。


「え……デカ」


 柚がとある一点を見つめて唖然とし始めていた。

 しゅんとしているが、それでもなおふた桁越えの何か。


「……ど、どっかとのハーフ、お前?」

「いや、純正の日本人だけど……」

「だ、だよね……」


 和臣はいたたまれない気分だった。

 柚が注目中のそれは、和臣のコンプレックスである。

 宝の持ち腐れ極まりなく、みじめな気分にさせてくれる。


「いや……マジでなんなん、それ」


 ところが、そんな中で柚の様子が何やらおかしかった。

 スマホを構えるのをやめて、興味深そうに接近してくる。


「こ、これ……ガチでアレしたらどうなんの?」

「それは、えっと……今想像してる状態があるなら、大体その想像通りに」

「……すご……」


 柚はごくりと生唾を飲み込んでいた。

 それから、


「……お前への罰、変更する」

「え?」

「撮影やめてやっから、今週の土曜朝10時に駅前広場まで来い」

「……? なんで?」

「は? わ、分かれよ! いいから来い! 今日はもう終わり! じゃあな!」


 そう言って柚は足早に立ち去っていった。


 和臣は今の言葉の意図が一応なんとなく分かりかけているが、


「そんなことってあるのか……?」


 学校生活終了のお知らせ状態から、なんとか首の皮一枚繋がったのかもしれない。


 ひとまずホッとした和臣は、急いでズボンと下着をあげることを忘れなかった。


「……土曜朝10時、駅前広場」


 別にまだ許されたわけではないので、それをすっぽかせば大変なことになりかねない。

 実際に何をされるのかはハッキリしないが、忘れずに向かう他ないだろう。





――――――――

本作は不定期更新です。

もし続きが気になったらフォローしといてくだされば。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る