優しき残酷な別れ
- ★★ Very Good!!
卒業の季節、片想いの女の子と別れを迎えようとしていた私がこの文章をお読みになりました。
短編ではございますが、主人公と同じく別離の苦しみを抱えていた者としまして、深い共感を覚えずにはいられませんでした。
私自身も手紙をしたためましたが、大変冗長なものとなっております。それに比べますと、まきむら先生が描かれる情景は、まるで現実の風景をそのまま切り取ったかのようなリアリティがございます。胸を締め付けるような展開こそありませんが、情感に訴えかける描写が涙を誘います。
「大切な人が、どこへ向かうのかわからない」
というこの感覚が、文字という形で液晶画面に浮かび上がって参りました。冷たい白黒の文字列の中に、名前のない主人公の痛みと迷いを確かに感じ取りました。
彼が「さよなら」ではなく「またね」と告げ、深い告白ではなく「寂しくないよ」と微笑みます。ついたのは、全部、
優しい嘘。です。
思わずため息をつき、同時にどこか微笑ましい気持ちでこのレビューを記しております。