第12配信 魂に刻まれた約束——最後の配信、全てを賭けて
ヴァイスとの激闘。
それは、まるで自分自身と向き合うような戦いだった。
鎌と剣が何度もぶつかり合い、互いに肉を裂き、血が地面に染み込んでいく。
視界は赤く染まり、呼吸すら苦しい。
だけど、それでも——俺は折れなかった。
「お前には分からないんだろうな。誰かを信じるってことも、自分の意志で立つってことも!」
「……理解不能だな。感情に意味などない。魂は、秩序のためにある」
「違ぇよ。魂は、自分のために、生きるために、燃やすもんだろうが!!」
——ズバァッ!!
俺の剣が、ヴァイスの鎌を砕いた。
信じられないという表情。
ほんの一瞬——彼の目に、“感情”が揺れた。
「……俺にも、かつて家族がいた」
それだけを呟いて、ヴァイスは崩れ落ちる。
彼の魂に宿っていたものが、ほんの一瞬だけ俺と共鳴した気がした。
[視聴者] ……泣いた
[視聴者] 黒崎、あんた漢だよ
[視聴者] こんなラストバトルで感情持ってかれるとは……
——そして、王宮へ。
闇の中心。神域プロジェクトの心臓部へ。
重厚な扉を押し開いた先にいたのは——
「よく来たね、黒崎ユウトくん」
その声は、驚くほど柔らかく。
だが、次の瞬間、ゾッとする冷気が背筋を走った。
「はじめまして。私は“プロジェクト統括官”ユリウス。現王の血筋にして、神の座を目指す者だ」
彼の背後には巨大な魔導装置。無数の魂が“情報”として保存されていた。
「この世界には争いが多すぎる。だから魂をデータ化し、理性のみで制御すれば、永遠の平和が訪れると考えた」
「……お前は、それを平和って言うのか?」
「感情が人を殺し、愛が裏切りを生む。だから必要なのは“均一化された魂”——そして、それを可能にするのが君の配信だ」
「……は?」
「君の配信は、我々の装置と“共鳴”していた。君の魂の強さは他者の魂に影響を与える。君が配信を続けるだけで、魂の統一は完了するのだよ。知らなかったかい?」
[視聴者] え? 黒崎、利用されてたってこと!?
[視聴者] 嘘だろ……そんな……
[視聴者] でも黒崎の魂は、誰かの希望になってたんだよ!!
「俺の配信は……誰かのためじゃねぇ。自分のためだ。
必死であがいて、悔しくて、でも立ち上がって、笑って……そうやって、魂をぶつけてきた。
それが、誰かに伝わってたなら……それは、“俺の言葉”だったからだ」
ユリウスの表情が変わる。
「——ならば、見せてもらおう。君の魂の“最期”を」
巨大な魔導装置が唸りを上げる。王都全土の魂が吸い上げられ、ユリウスに集まっていく。
「これが、“神の魂”だ」
——最終決戦。
黒崎 vs ユリウス。
だが、俺はもう迷わない。
今までの全部が、俺の中にある。
セリス、ヴァイス、リエル、団長、視聴者のみんな、そして——俺自身。
「いくぞ、ユリウス。お前の“偽りの神”なんて、ぶっ壊してやる!!」
剣を構え、全力で跳ぶ。
魂が震えるような戦いが始まる。
剣と魔導が空を割り、地が裂ける。
視界が白くなるほどの衝撃の中——
俺の剣は、ユリウスの胸を貫いた。
「な……ぜだ……なぜ、君の魂は……ここまで……強い……」
「簡単なことだよ。
俺は、俺の配信で、
この世界で——本気で、生きてたんだよ」
—
——気づけば、朝日が差し込んでいた。
ユリウスの装置は崩壊し、魂は空へと解放された。
空を見上げると、無数の光がゆっくりと舞い上がっていく。
リエルが隣に立ち、ぽつりと呟いた。
「ありがとう、黒崎ユウト。あなたの配信は……誰よりもリアルだったわ」
[視聴者] ……ありがとう。君の人生、ちゃんと受け取った。
[視聴者] この配信、忘れない……
[視聴者] また、いつか会えるよな? 黒崎……!
俺はスマホを掲げて、笑った。
「おう。また、いつかどこかで。
その時は——
もっと“リアル”な俺を、見せてやるよ」
配信終了。
でも、俺の物語は終わらない。
魂は、まだ燃えているから。
⸻
【最終回・完】
【悲報】チートなしの異世界配信者、リアルすぎて炎上する ここる @CCR_0320
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