第8配信 闇商人の反撃——忍び寄る危機

「クソが……!」


男は激しく目を見開き、ナイフを突き出してきた。

俺は思わず一歩後退る。


「しっかりしろ! 反撃するぞ!」


騎士団の一人が叫ぶと、他の騎士たちも剣を抜き、男を取り囲む。

だが、男の眼差しは冷徹で、あっという間に状況を覆す準備を整えていた。


「なめるなよ、騎士団」


男は一瞬、懐から何かを取り出す。

それは——煙玉だった。


[視聴者] うわ、煙玉かよ!

[視聴者] やっぱりこいつ、ただの闇商人じゃねぇな

[視聴者] わけわからん! どうなるんだ!?


煙が立ち込めると、瞬時に周囲の視界が奪われる。

「クソッ! 見えねぇ!」

「周囲を警戒しろ!」


騎士たちが動揺し、素早く周囲を探り始める。しかし、煙の中で男はすでに姿を消していた。


「逃がすか!」


騎士の一人が叫び、追いかけようとした瞬間——


「ちょっと待て!」


俺が思わず声をあげる。

「何をしてるんですか! あいつ、仲間が街に潜入してるんですよ!」


「……何?」

「俺の後ろに、もう一人いるって言ってました」


騎士団の面々が一瞬固まる。

「それは……」


そのとき、煙がようやく晴れ、視界が戻った。


「――あれ?」


煙の中から逃げたはずの男が、もういない。

それどころか、騎士団の後ろに立っているはずの俺の目の前に、白いマントを羽織った人物が現れていた。


[視聴者] 何だこの人!?

[視聴者] あれ? こいつ、もしかして……!?

[視聴者] やっぱり罠か!?


その人物の顔は、すぐには思い出せなかった。

だが、少し見覚えがある——


「お前……!」


「久しぶりだな、黒崎」


声をかけてきたその人物の顔を、ようやく認識した。


「——お前、どうしてここに!?」


目の前に現れた人物は、俺が異世界に転生する前に関わっていた人物の一人だった。

その男、名は**「セリス」**。

転生前、俺が一度だけ関わった怪しい商人だ。


[視聴者] うわあああ! こいつ、もしかして元知り合い!?

[視聴者] なんでここに!? この展開は予想外すぎるだろ!


セリスは冷ややかに俺を見つめ、にやりと笑う。


「こんな場所で再会するとはな。お前、こんな面倒なことに巻き込まれてるとは、なかなか運がいい」


「……お前、闇商人だったのか?」


セリスは肩をすくめる。


「俺はただ、商売をしていただけさ。だが、今はその商売を一歩先へ進めるつもりだ。お前も少しは協力してくれないか?」


「協力? 何を言ってるんだ!」


俺は思わず怒鳴りそうになる。

だが、セリスは涼しい顔で続けた。


「お前がその草を持っている時点で、俺たちの取引に興味を持っているのは分かっている。だが、それだけでは面白くない。お前、あの騎士団の連中と一緒に動くつもりだろう?」


「……!」


「だが、それでは足りない。俺が目指しているのは、もっと大きなことだ。お前もその先にある力を手に入れるべきだ。どうだ? 一緒に手を組まないか?」


[視聴者] えええ!? こいつ、なんでこんなに悪い顔してんだ!?

[視聴者] こいつ、絶対怪しい! 絶対悪いことするぞ!

[視聴者] なんだこの展開は!


セリスは俺をじっと見つめ、その目には冷徹な輝きがあった。


「お前の選択次第だ、黒崎。だが、この先の世界では、力が全てだ。お前もそのことを知っているだろう?」


俺はその目を見つめ返しながら、心の中で決断を下す。


俺が今、セリスと手を組んだら——

どうなるのか。


そして、騎士団に裏切られることはないのか。


「……俺は、そんなものを信じない」


そう言って、俺はセリスを睨みつけた。


「さっさと消えろ!」


[視聴者] よっしゃ! やっぱり仲間にはならんか!

[視聴者] これでまた新たな敵が出てきたか……


セリスは不敵に笑い、ゆっくりと後ろに退いた。


「まぁ、いずれお前も分かるさ。だが、お前の決断は無駄にはならない。覚えておけ」


その後、セリスは消えていった。

その一瞬で、俺の目の前の世界がまた少し変わった気がした——



(第8配信 完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る