第6配信 決断のとき——視聴者が選ぶ未来
「……どうする?」
視聴者のコメントが次々と流れる。
[視聴者] これは騎士団に報告一択じゃね?
[視聴者] いや、まずは男の正体を探った方がいいかも
[視聴者] でも銀貨もらわないと街に入れないしな……
[視聴者] これ、どっち選んでも何かありそうなやつ
俺は目の前の黒い草をじっと見つめる。
老人の話が本当なら、この草は「死者の嘆き」。
一時的に身体能力を高める代わりに、あとで死に至る禁忌の草。
渡してしまえば、俺も共犯になるかもしれない。
かといって、銀貨をもらえなければ街に入れない。
「……決めた」
① 騎士団に報告する
俺は黒い草を握りしめ、老人に尋ねた。
「騎士団ってどこに行けば会えますか?」
「街の門を通ってすぐの場所に詰め所がある。だが、お前さんはまだ街に入れておらんじゃろう?」
「……そうなんですよね」
どうにかして街に入る方法を考えなければならない。
「その銀貨、ワシが何とかしてやろうか?」
「え?」
「ワシは長年ここで商売をしておる。この街の門番もよく知っとる。ワシが保証人になれば、銀貨がなくとも街に入れるかもしれん」
「マジですか!?」
老人はゆっくりと頷く。
「ただし……お前さんが正しい選択をすることを、ワシは信じとるぞ」
[視聴者] うおおお! これはいい流れ!
[視聴者] やっぱり善行を積むといいことあるな
[視聴者] いや、でもまだ安心できんぞ……
俺は深く息を吸い込み、そして——
「お願いします」
そうして、俺はついに街の門をくぐることになった。
⸻
街の中——騎士団との接触
門をくぐると、そこには石造りの建物が立ち並ぶ光景が広がっていた。
道行く人々は活気があり、商人の掛け声が響く。
「おお、ついに街の中に入れたな……」
[視聴者] やっと来たか!
[視聴者] ここからが本番だな
[視聴者] で、まずは騎士団に行くのか?
「……ああ、まずは騎士団だな」
老人に教えられた通り、門を抜けてすぐの場所に詰め所があった。
入り口には、銀色の鎧をまとった男たちが立っている。
「失礼します。ちょっと話を聞いてもらいたいんですが」
中に入ると、部屋の奥に座っていた壮年の騎士が顔を上げた。
「……お前は?」
「俺は旅の者です。実は、街の外で怪しい取引を持ちかけられて……」
そう言って、俺は黒い草のことを話し始めた。
騎士は話を聞くと、表情を引き締めた。
「その男の特徴は?」
「長いコートを着ていて、黒い髪に細身の体型……」
騎士はしばらく考え込んだ後、低く呟く。
「……『闇商人』かもしれんな」
「闇商人?」
「この街では、裏で違法な取引を行う者たちがいる。特に、『死者の嘆き』のような禁忌の品を扱う者は、重罪だ」
「……やっぱり」
[視聴者] うわ、やっぱりあの男アウトじゃん
[視聴者] これは報告して正解だったな
[視聴者] でも、ここからどうする?
騎士は俺の方をじっと見つめた。
「お前、協力する気はあるか?」
「……え?」
「この男を捕まえるために、囮になってもらいたい」
「囮……?」
「お前はすでに、依頼を受けるフリをしている。つまり、あの男はお前を信用しているはずだ。もし奴に会って、取引を持ちかければ……」
「まさか、捕まえるための作戦ですか?」
騎士は頷く。
「もちろん、無理にとは言わん。ただ、これはお前自身の身を守ることにもなる。あの男は、いずれお前を使い捨てにしようとするはずだからな」
「……」
[視聴者] うわ、また選択肢きたぞ
[視聴者] 囮になるのはリスク高くね?
[視聴者] でも、ここで逃げたら何か後々やばいことになりそう……
俺はしばらく考えた。
確かにリスクはある。
だが、もしここで逃げれば、あの男はまた別の誰かに「黒い草」を渡させるかもしれない。
「……わかりました。協力します」
そう言うと、騎士の口元に微かな笑みが浮かんだ。
「よし、では作戦を説明しよう」
俺は、異世界に来て初めて本格的な危険に飛び込むことになった——。
⸻
(第6配信 完)
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