第5配信 黒い草の正体と、最初の選択

森の中を進みながら、俺は慎重に辺りを見回した。


「黒い草、ねぇ……どんなものなんだ?」


さっきの男が言っていた「黒い草」とやらを探しながら歩く。だが、周囲には普通の緑の草や木々ばかりで、それらしいものは見当たらない。


[視聴者] 絶対ヤバいやつだろ、その草

[視聴者] なんか毒草とかじゃね?

[視聴者] というか、その男ほんとに信用していいのか?


「俺だって疑ってるよ……でも、これを取らなきゃ街に入れないんだ」


そう言いながら森を進んでいると、ふと目の前に違和感を覚えた。


「……あれか?」


目の前に広がるのは、一面に生い茂る黒い葉を持った草だった。まるで夜の闇をそのまま形にしたような、不気味な色合いの植物。


「……やっぱり、普通の草じゃないよな」


試しに一本手に取ってみる。思ったよりもしなやかで、手触りは柔らかい。だが、近づいて匂いを嗅いだ瞬間——


「ッ……!」


急激な眩暈が襲ってきた。


視界が一瞬ぼやけ、意識が遠のきかける。


「な、なんだ……!?」


慌てて手を離すと、眩暈は徐々に収まっていった。


[視聴者] おいおい、大丈夫か!?

[視聴者] やっぱり毒草じゃねーかよ!

[視聴者] これ、ほんとに取って大丈夫なのか?


「……どうするか」


この草を男に渡してしまっていいのか?


何か嫌な予感がする。普通に考えて、この草は何か危険なものだ。

だが、渡さなければ街に入る手段がない。


「……くそ、どうする」


このまま依頼を受けるか、それともやめるか。


悩んでいると、視聴者のコメントがまた流れ始めた。


[視聴者] 一旦、他の人に聞いてみるのは?

[視聴者] 街の外に誰かいないのか?

[視聴者] どこかに、この草について知ってるやつがいるかも


「……確かに」


とりあえず、この草を持って誰かに話を聞いてみるか。


そう決めて、俺は街の門の方へと戻り始めた。





門の外で出会った者


街の門の近くに戻ると、少し離れた場所に小さな屋台が出ているのが見えた。


「……あれ?」


そこには、年老いた男が腰を下ろしながら何か薬草を並べている。


「薬草屋、か?」


とりあえず情報を得るために、男の元へと向かう。


「すみません、この草について知っていますか?」


そう言いながら、俺は黒い草を差し出した。


すると、老人の顔色が一瞬で変わった。


「ど、どこでこれを……!?」


「えっ?」


老人は慌てた様子で周囲を見回すと、俺を手招きした。


「坊主、こっちに来なさい! その草を見せびらかすんじゃない!」


慌てて老人の店の奥へと移動する。


「おい坊主、この草がなんなのか分かっておるのか?」


「いや、詳しくは……」


「これは『死者の嘆き』と呼ばれる禁忌の草じゃ」


「……禁忌?」


「そうじゃ。この草を煎じて飲めば、一時的に肉体が活性化する。だが、その後、身体が異常をきたし、やがて……死に至る」


「なっ……!?」


思わず息を呑む。


「つまり、これは毒草ってことか」


「その通りじゃ。しかも、この草を悪用しようとする者は少なくない……お前さん、まさか誰かにこれを渡そうとしておったのか?」


俺は、さっきのコートの男のことを思い出す。


あの男は、俺にこの草を取らせて、何をしようとしていたんだ?


[視聴者] うわ、やっぱりヤバい草だった!

[視聴者] これ、渡したらヤバいやつじゃん

[視聴者] ていうか、あの男絶対悪党だろw


「……これ、どうすればいいんですか?」


「この草は処分するのが一番じゃ。だが、そんなことをすればお前さん、依頼を果たせずに街に入れなくなるじゃろう?」


そうだ。依頼をこなさなければ、銀貨は手に入らない。つまり、街に入ることができない。


「……でも、こんなものを渡すわけにはいかない」


「坊主、よく考えるんじゃな。この街には、王国の騎士団が駐在しておる。もしその者が怪しい動きをしておるなら、騎士団に知らせればよい」


「騎士団……?」


確かに、そういう手もある。


だが、果たしてそれが正解なのか?


コートの男は、ただの街の住人ではないはずだ。もし下手に動けば、俺が狙われる可能性もある。


「……どうするか」


[視聴者] これは重要な選択だな

[視聴者] 街に入りたいけど、毒を渡すのはマズい

[視聴者] ここで騎士団に報告すべきかも?


選択肢は二つ。

1. コートの男に草を渡し、銀貨を受け取る(街に入るが、悪事に加担する可能性あり)

2. 騎士団に報告し、男の正体を探る(安全策だが、街に入る手段を失う可能性あり)


「……さて、どうするかな」


画面には、視聴者のコメントが溢れ返る。


そして、俺は決断を下すのだった——




(第5配信 完)

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