第4配信 異世界の街、到達。そして……

視聴者数が100を超えた。


画面に流れるコメントの勢いも増している。


[視聴者] やばい、ガチで面白くなってきた

[視聴者] 小屋で見つけた本、もっと詳しく読んでくれよ!

[視聴者] で、次はどうするんだ?

[視聴者] そろそろ街に着いてもいいんじゃね?


「俺も、そろそろ街に行きたいんだけどな……」


さっきの小屋で見つけた本の内容を考えながら、森の中を歩き続ける。

異世界で「役目」を果たさなければ元の世界に戻れない。

そして、その「役目」を果たすには、この世界の「力」を手に入れなければならない。


だが、それが何なのか、まだわからない。


「とにかく、街に行けば何かわかるかもしれないな」


そんなことを考えながら進んでいると、森の向こうに開けた光景が広がっていた。


遠くに見えるのは、高い城壁に囲まれた街。


「……ようやく着いたか」


街の入り口には、二人の門番が立っていた。金属製の鎧を身にまとい、腰には剣。

どうやら、ちゃんとした警備があるらしい。


「おい、お前。見ない顔だな」


門番の一人が警戒するように声をかけてくる。


「旅の者です。しばらくこの街に滞在したいのですが……」


とりあえず、適当なことを言ってみる。


「この街に入るには、入国税が必要だ。銀貨三枚だが、持っているか?」


「……銀貨三枚?」


そんなもの、持っているわけがない。


「銀貨、ないのか?」


「いや、その……持っていません」


すると、門番が不審そうな目を向けてくる。


「金も持たずに旅をしているのか? ずいぶんと怪しいな」


[視聴者] え、詰んだ?

[視聴者] おいおい、どうするんだよ?

[視聴者] もしかして、金がないと入れない系?


「ちょっと待ってくれ、何か方法はないのか?」


「……まあ、金がないなら仕方がない。街の外で仕事をして、金を稼いでからまた来るんだな」


そう言って、門番は取り合ってくれない。


「マジかよ……」


せっかく街まで来たのに、金がないという理由で入れないとは。


「どうするかな……」


途方に暮れていると、不意に後ろから声がした。


「おや、困っているのかい?」


振り向くと、そこには長いコートを羽織った男が立っていた。


「君、もしかしてこの街に入りたいのかい?」


「……そうだけど、銀貨がなくて」


「ふむ、それならいい取引をしようじゃないか」


男は不敵な笑みを浮かべながら、俺に近づいてくる。


[視聴者] うわ、めっちゃ怪しいやつ来た

[視聴者] でも、助かるチャンスじゃね?

[視聴者] これ絶対ヤバい取引持ちかけてくるパターンだろw


「取引?」


「ああ。君がこの街に入りたいなら、私の依頼を一つ引き受けてくれれば、銀貨三枚を渡そう」


「依頼って?」


「簡単なことさ。この森の中に生えている『黒い草』を採取してきてほしい。それだけでいい」


「……黒い草?」


「そう。ほんの少し、特殊な効果がある薬草なんだがね。どうだい? 簡単な仕事だろう?」


[視聴者] いやいや、ヤバいってその草!

[視聴者] どう考えてもアカンやつだろw

[視聴者] でも、これやるしかなくね?


怪しすぎる。


しかし、他に選択肢がないのも事実だ。


「……わかった、やるよ」


「いい返事だ。これが銀貨三枚、前払いしておこう」


男は銀貨を手渡してきた。


「じゃあ、よろしく頼むよ」


男が去っていった後、俺は改めて画面を見る。


[視聴者] え、もう銀貨もらっちゃったのか?

[視聴者] フラグが立ったな……

[視聴者] これ、どこかで詰むやつじゃないのか?


確かに、この取引は怪しい。だが、まずは依頼をこなして街に入ることが優先だ。


「さて……黒い草、探しに行くか」


そして、俺は再び森へと向かうのだった—




(第4配信 完)

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