第3配信 炎上、異世界の秘密がバレかける

目の前の画面に、コメントが流れ続ける。


[視聴者] お前、マジで異世界にいるのか?

[視聴者] なんかしっかりしてるけど、まさか本物?

[視聴者] スライムの倒し方、普通じゃないんだけど?

[視聴者] もしかして、異世界ってゲームみたいな世界なの?

[視聴者] わからんけど面白いwww


「まじで、どうなってんだよ」


ここまでコメントが流れるとは思ってもみなかった。

異世界に転生して、命をかけたサバイバルを配信しているという状況。最初は軽い気持ちで始めたが、だんだんと深刻になってきている。

このまま異世界を生き延びるためには、強くならなければならない。そう、普通に生きていけるわけがない。


ただ、視聴者の反応が気になる。あまりにもリアルすぎるこの配信が、現実世界のどこかで問題にならないか心配だ。


「やっぱり、これはただのゲームじゃないんだよな」


その瞬間、画面の端に小さく表示されたメッセージが目に入る。


【視聴者数:52】


「え? こんなに増えてんのか?」


視聴者数が一気に増えている。これ、いったいどういうことだ。

配信を見ている人々が増えるのは嬉しいことだが、同時に一抹の不安も感じる。コメントが多すぎて、追いきれない。


[視聴者] どこにいるんだよ、マジで場所特定しろよ

[視聴者] これ、リアルタイムで放送してるんだよな?

[視聴者] わけわからんけど、楽しんでる自分がいる


「やっぱり、みんな気になってるのか」


この配信が本物だとしたら、どんな反応があるか分からない。異世界に転生したのに、こんなにも視聴者が集まっていること自体が異常だ。


俺は再び、画面の上部に浮かんだメニューを見つめる。


【異世界配信システム】

配信を通じて情報を発信し、視聴者からの反応を受け取ってください。

あなたの行動が視聴者の反応に影響を与えます。


「……これ、どういうことだ?」


配信が、リアルタイムでどこまで視聴者の反応に影響を与えるのかは分からない。

けれど、ここで得られる情報を活かさなければ、次に進むのは難しいだろう。


「とりあえず、もう少し進んでみるか」


視聴者からのコメントは次々と流れるが、それに答えている余裕はない。状況があまりにも不安定すぎる。

少しでも強くなるために、次に進むしかない。


歩きながらも、ふと視線を画面に戻すと——


[視聴者] あれ、これってリアルで異世界に行ってる感じだよな?

[視聴者] どうやって帰るのか気になるけど、しばらく見守るわ


そのコメントに少し胸がざわつく。

やっぱり、この配信がただのゲームでないことを、視聴者はすでに察しているようだ。自分が本当に異世界に来てしまったことが、どこかでバレ始めている気がする。


「俺、どうすれば……」


焦りと不安が押し寄せる。

でも、このまま自分が異世界で生き延びるためには、手に入れられる情報を全て活用しなければならない。


と、その時、また画面にコメントが表示される。


[視聴者] これって、どんな世界なんだろうな

[視聴者] 地図とかないの?

[視聴者] 俺、異世界行ったことないからわからんけど

[視聴者] まずは街を探せよ、そっちの方が情報集まりそうだし


「街か……」


視聴者が言う通りだ。今の俺には何も分からない。土地勘もないし、この森がどこに続いているのかも見当がつかない。

だが、そうだ。街があれば、情報が集まるはずだ。何かしらの助けを得られるかもしれない。少なくとも、いろいろなヒントを手に入れることができるだろう。


「よし、街を目指すか」


気を取り直して、俺は森の中を歩き始めた。視界を遮る枝や葉がうっとうしいが、歩き続けるしかない。どれくらい歩いたのだろうか。足元に力が入らなくなり、体力が消耗してきた。


「まじで、ここどこだよ……」


不安な気持ちが広がる。だが、ふと気づくと、画面にまた新しいコメントが流れた。


[視聴者] こっちも気になるけど、無事に街にたどり着けるかだな

[視聴者] なんかさ、リアルすぎて普通に心配してるわw

[視聴者] 次何か起きたら教えてよ、マジで心配してる


そのコメントに少しだけ心が軽くなる。どこかの誰かが心配してくれている。異世界で一人きりの孤独感が少しだけ和らいだ気がした。

でも、それでも俺はこの世界で生きていくために、進み続けなければならない。


そして、さらに歩みを進めると、ふと前方に光が差し込む場所が見えてきた。


「……あれは、もしかして?」


その先には、少し開けた場所があり、遠くに見えるのは一軒の小屋だった。


「小屋? まさか、誰かがいるのか?」


慎重に近づきながら、周囲を警戒する。だが、何も襲ってくる様子はない。周囲は静かで、ただ風が木々を揺らしているだけだ。


小屋の扉をそっと開けると、内部には予想以上にシンプルな作りの部屋が広がっていた。木製の机、椅子、そして何かを調べるための本が散乱している。まるで誰かがここで暮らしていたような痕跡が残っている。


だが、その時、机の上に一冊の古びた本が目に入った。表紙には奇妙な文字が刻まれている。


「これは……?」


直感で手に取ったその本を開くと、内容はすべて異世界のことが書かれているようだった。


「これ、まさか……」


読むに従って、目を疑いたくなるようなことが書かれていた。


「異世界に転生した者は、この世界での役目を果たさなければならない。その役目を果たせなければ、元の世界に戻ることはない。」


その文を読んだ瞬間、背筋に冷たいものが走った。元の世界に戻るためには、何かしらの「役目」を果たさなければならないということだ。

だが、それが一体何なのか、どこにも書かれていない。


「やっぱり、ただの冒険じゃないんだ」


そして、さらにページをめくると、異世界の「法則」についても書かれていた。


「この世界では、異世界の力を持つ者が支配している。その力を手に入れることで、元の世界に戻る方法が見つかる。」


その一文を読んだ瞬間、何かが腑に落ちるような感覚があった。異世界に来た理由、そして元の世界に戻る方法。

どうやら、この「力」を手に入れることが、自分が戻るための鍵になりそうだ。


その時、また画面にコメントが流れる。


[視聴者] それ、どういう意味?

[視聴者] 役目? 力? 何か、もっと教えてくれよ


だんだんと、視聴者の中には、俺が異世界で「何か」を成し遂げなければならないということを理解し始めたようだ。


「……でも、俺にはまだ何も分からない」


そのまま、俺は本を閉じ、深く息をついた。


「とりあえず、次に進むしかないか」


視聴者のコメントが、再び画面を埋め尽くす。


[視聴者] 頑張れ、応援してるぞ!

[視聴者] これからが本番だな!

[視聴者] 次の配信、楽しみにしてる!


そして、俺は再び歩みを進めるのだった——



(第3配信 完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る