第2配信 初回配信、スライムにボコられる

「とりあえず、飯と水を確保しないと……」


目の前に広がるのは、どこまでも続く深い森。見渡す限り、人の気配はない。


俺は改めて自分の状況を整理する。


① 俺は異世界らしき場所にいる。

② 配信がリアルタイムで行われ、視聴者のコメントが届く。

③ 帰還方法は不明。そもそもここが何なのかも分からない。


「ゲーム実況なら得意なんだけどな……現実でサバイバルは無理だって」


ふと画面を見ると、視聴者が増えていた。


【現在の視聴者数:12】


おいおい、さっきまで1人だったのに急に増えたな。

流れるコメントも、明らかに俺の状況に興味津々って感じだ。


[視聴者] これ、新作の異世界系コンテンツ?

[視聴者] いや、リアル系配信っぽいな

[視聴者] 主人公ムーブしてて草

[視聴者] てか、そもそもこれってガチなのか?


「俺が知りたいんだけどな……」


現実かどうか疑う視聴者もいるが、俺にとってはガチで命がかかっている。


幸い、体は健康そのものだし、飢えや喉の渇きもまだ大丈夫そうだ。ただ、ずっと何も食べなければ、そのうちやばくなる。


「視聴者のコメント、頼れるか?」


試しに問いかけてみる。


「この森で、何を探せばいいと思う?」


[視聴者] 食えそうな植物?

[視聴者] 水辺を探せば?

[視聴者] いや、まずは武器確保じゃね?

[視聴者] とりあえず歩き回れ


「まあ、そうなるよな……」


とりあえず、近くに使えそうなものがないか探してみる。

その時——


ピチャン。


足元で何かが跳ねる音がした。


「ん?」


視線を落とすと、そこには小さな青いスライムがいた。


「……うお、ガチでRPGのモンスターじゃん」


トロっとしたゼリー状の体、ポヨポヨと跳ねる動き。ファンタジー作品でよく見るモンスターそのものだ。


試しに画面を見ると、視聴者の反応は——


[視聴者] うぉぉぉ! スライムだ!!

[視聴者] マジで異世界じゃんwww

[視聴者] 早く倒せ!!

[視聴者] キルカメ期待www


「いやいや、倒せって言われても……」


俺は武器を持っていないし、そもそも戦闘経験なんてない。ゲームの中なら何度も戦ったが、現実の戦いとなると話は別だ。


「でも、こいつを倒せば経験値が入るかもしれない……?」


RPGでは、スライムは最弱のモンスター。素手でもなんとかなるんじゃないか?


意を決して、一歩踏み出した。


「よし、やるぞ!」


スライムに向かって、渾身の拳を振り下ろす——


ビヨンッ!!


「えっ!?」


拳がスライムの体に当たった瞬間、思い切り弾き返された。


「ぐっ……」


バランスを崩して尻もちをつく俺。その間にもスライムはバウンドし、俺の腕に飛びついた。


ズブッ……!


「ぐあっ!? なんか、溶ける!?」


スライムの体がまとわりつくと、肌がじんわりと熱くなった。

まるで強めの酸に触れたような感覚——こいつ、物理攻撃無効&酸ダメージ持ちか!?


[視聴者] え? 主人公ピンチ?

[視聴者] だっさwww

[視聴者] スライム相手に負けそうで草

[視聴者] 早く逃げろwww


「う、うるせえ!! こっちは命がかかってんだよ!!」


俺は必死にスライムを振り払おうとするが、ベタつく体が絡みついてなかなか剥がれない。


(ヤバい、どうすれば——)


その時、視聴者コメントの中に、有益な情報が流れた。


[視聴者] 水ぶっかければ? スライムって水に弱くね?


「……それだ!」


確かに、スライムは水で薄まるとダメージを受ける設定のゲームが多い。


「水、水……!!」


必死に周囲を探すと、少し離れた場所に小さな川が流れているのが見えた。


「ちくしょう、逃げるぞ!」


スライムを腕に貼り付けたまま、俺は必死に川へ向かって走った。


そして——


「くらえっ!!」


川の水をすくい、スライムにぶちまける!


ジュワァァァ……


スライムの体が一瞬で縮み、溶けるように地面へと消えていった。


「……はぁ、はぁ……っ!」


俺はその場にへたり込む。


[視聴者] うおおおおお!

[視聴者] 初バトル勝利!!

[視聴者] スライムごときでギリギリwww

[視聴者] でも面白かったわww


「……やばい、マジで生き延びられる気がしねえ」


それでも、この異世界で生き残るためには、戦い方を学ばなければならない。


「クソ……次はもっと楽に勝てるようにしねえと」


こうして俺の**異世界サバイバル(炎上配信付き)**は幕を開けたのだった。


(第2配信 完)

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