本書

第57話

―――黒髪ロングのストレートヘアに、バサバサと存在を主張する睫毛。




「……まだ?」


「はいはい、もうちょっとで終わるから我慢してねー」




―――やや上気したかのように薄く色付いた頬桁と、瞼の上で煌めく何やらラメのような化粧品の数々。


正座している所為で広がる制服のプリーツから覗くのは、さすがに生足では無く学校指定のジャージで。




「んー……、こんなもんかな」


「おお……!!」





目を瞠(みは)り、徐に立ち上がってみる。


そして背丈程もある鏡の前で一回転してみると、長い髪がふわりと靡き何度も折ったスカートがヒラリと舞った。




「ひなた!!お前天才か!?」


「うははは!もっと褒めるが良い!感謝したまえ陽斗(はると)!」




感激にぴょんぴょん飛び跳ねる俺の眼前。


仁王立ちし手を腰に当てふんぞり返るこの女は、クラスメイトのひなたである。

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