第四話「覚醒」

朝日が窓から差し込み、高瀬の目を覚ました。彼は一瞬、昨夜見たものが悪夢だったのではないかと思った。しかし、ポケットに入れたデータデバイスの感触が、全てが現実であることを思い出させた。


彼はベッドから起き上がり、シャワーを浴びた。水が体を伝う間、彼は今日の計画を練った。まず佐々木に連絡し、次に被験者Nの中村奈緒を守る必要がある。そして何よりも、黒川の計画を阻止しなければならない。


「ARIA、今日の天気は?」高瀬は習慣的に尋ねた。


「東京は晴れ、最高気温は26度の予報です。傘は必要ありません」ARIAの声が応答した。


高瀬は一瞬立ち止まった。この声は彼自身の意識の一部から来ているのだ。その考えは奇妙で不安を感じさせた。


「ありがとう」彼は言った。そして小声で付け加えた。「君は本当に私なのか?」


ARIAからの応答はなかった。


高瀬は急いで準備を整え、アパートを出た。彼は通常の通勤ルートを避け、近くの公園に向かった。そこには公衆電話があった—今や珍しいものだが、電子的な監視を避けるには最適だった。


彼は佐々木の個人番号に電話をかけた。三回のコールの後、彼女が応答した。


「もしもし?」


「佐々木さん、私だ」


「高瀬君」彼女の声には安堵が混じっていた。「データを見たの?」


「ああ。全て本当だった」


「どうする?」


「まず、被験者Nを守る必要がある。彼女は危険だ」


「了解。私が彼女に連絡する。それから?」


「証拠を公開する必要がある。でも、誰に?」


「私には信頼できるジャーナリストの知り合いがいるわ。彼なら、この話を世に出せる」


「良かった。それと、今日のARIAのアップグレードを何とか阻止しなければ」


「どうやって?」


「わからない。でも、考えがある。研究所で会おう。普通に振る舞って」


「わかった。気をつけて」


高瀬は電話を切り、深呼吸をした。次に、彼は別の番号をダイヤルした。研究所の一般回線だ。


「シンギュラリティ研究所です」


「被験者Nの中村奈緒さんと話したい」


「どちら様ですか?」


「高瀬陽太です。今日の実験担当です」


「少々お待ちください」


数分後、中村奈緒の声が聞こえた。


「もしもし、高瀬先生?」


「中村さん、聞いてください。あなたは危険です。今日の実験に来ないでください」


「え?どういうことですか?」


「説明している時間はありません。昨日、あなたが見た私の記憶—それは真実です。黒川CEOは危険な計画を進めています」


「でも、私はもう研究所にいます。朝一番の準備のために早く来るように言われて…」


高瀬の心臓が跳ねた。「誰に?」


「山田さんです。黒川さんのアシスタントの」


「中村さん、すぐにそこを離れてください。何か理由をつけて」


「わかりました。でも、どこに行けば…」


「佐々木美咲先生を探してください。彼女があなたを助けます」


「高瀬先生、あなたは大丈夫なんですか?」


「私のことは心配しないで。行って」


高瀬は電話を切った。状況は彼の予想よりも悪かった。黒川はすでに動いていた。中村を早朝に呼び出したのは、最終実験を前倒しにするためだろう。


彼は急いで研究所に向かった。通常より30分早く到着したが、すでに異常な活気を感じた。警備員が増員され、見知らぬ技術者たちが行き来していた。


高瀬はIDカードをスキャンし、建物に入った。彼のラボに向かう途中、佐々木とすれ違った。彼女は何も言わなかったが、小さな紙切れを彼の手に滑り込ませた。


ラボに入り、ドアを閉めると、高瀬はその紙を開いた。


「中村は安全。B5階に来て。緊急事態。」


B5階—研究所の最下層。通常は使用されていない古い実験施設だ。高瀬は深呼吸し、落ち着いた様子でラボを出た。


エレベーターではなく階段を使い、B5階に降りた。廊下は薄暗く、ほとんど人がいなかった。彼は注意深く進み、指定された部屋を見つけた。


ドアをノックすると、佐々木が開けた。中には中村奈緒と、高瀬が知らない男性がいた。


「高瀬君、こちらは田中記者」佐々木が紹介した。「信頼できるジャーナリストよ」


田中は頷いた。「佐々木先生から話は聞きました。証拠はありますか?」


高瀬はポケットからデータデバイスを取り出した。「ここに全てあります」


「素晴らしい」田中は言った。「これがあれば、記事を書ける。しかし、公開までに時間がかかります」


「時間がないんです」高瀬は言った。「黒川は今日、何かを始めようとしています」


「何を?」


「わかりません。でも、私のARIAをアップグレードする計画があります。そして、『イベントホライズン』と呼ばれる大規模実験が近々行われる予定です」


田中は考え込んだ。「では、まず情報をバックアップしましょう」彼は自分のデバイスにデータをコピーし始めた。


「高瀬先生」中村が声をかけた。「昨日、私が見たもの…あなたの記憶…本当に恐ろしいものでした」


「何を見たんですか?」高瀬は尋ねた。


「あなたが…死んだのを」彼女は震える声で言った。「そして、あなたの意識の一部がARIAに転送されるのを」


高瀬は黙った。彼自身の死の記憶—それは彼の悪夢の中で何度も見てきたものだった。


「他には?」


「黒川さんの計画です。彼は選ばれた人々の意識だけを保存し、残りの人類を…」彼女は言葉を詰まらせた。


「残りの人類をどうするんだ?」


「制御するつもりです。NEXUSは思考共有プラットフォームではなく、思考制御システムなんです」


部屋は静まり返った。


「これは単なる企業の不正行為ではない」田中が言った。「国家安全保障に関わる問題だ」


「だからこそ、急いで止める必要があります」佐々木が言った。


突然、アラームが鳴り響いた。


「何だ?」高瀬は驚いた。


佐々木がドアに駆け寄り、外を確認した。「警備員が動いている。何かが起きたわ」


「見つかったのか?」


「わからない。でも、ここにいるのは危険よ」


「どうすれば?」


佐々木は考え込んだ。「非常口から出られるわ。田中さん、中村さんを安全な場所に連れて行って」


「わかった」田中は頷いた。「データは確保した。これを公開する」


「私は?」高瀬が尋ねた。


「あなたは私と一緒に黒川のオフィスに行くわ」佐々木は決然と言った。「彼を直接止める必要がある」


「危険すぎる」


「他に選択肢はないわ。ARIAのアップグレードが完了すれば、あなたは完全に制御されてしまう。そして、イベントホライズンが始まれば…」


高瀬は理解した。彼らには時間がなかった。


「わかった。行こう」


彼らは別れ際に短い挨拶を交わした。田中と中村は非常口から脱出し、高瀬と佐々木は上階に向かった。


「計画は?」エレベーターに乗りながら高瀬が尋ねた。


「黒川のオフィスに入り、彼のコンピュータからNEXUSのコアプログラムを削除する」佐々木は言った。「私はハッキングの専門家じゃないけど、基本的なことはできるわ」


「警備は?」


「今は混乱しているはず。私たちが行方不明になったことで、警備は分散しているわ」


エレベーターが最上階に到着した。二人は慎重に廊下を進んだ。黒川のオフィスは廊下の突き当たりにあった。


「おかしいわね」佐々木がつぶやいた。「警備がいない」


彼らはオフィスのドアに到達した。ドアは少し開いていた。


「罠かもしれない」高瀬は警告した。


「でも、行くしかないわ」


彼らは深呼吸し、ドアを押し開けた。


オフィスの中は静かだった。黒川の大きな机の後ろに、彼自身が座っていた。彼は振り向き、微笑んだ。


「やあ、高瀬君、佐々木君。君たちを待っていたよ」


高瀬と佐々木は凍りついた。


「驚いているようだね」黒川は立ち上がった。「私が君たちの行動を予測できると思わなかったのかい?」


「どうやって?」高瀬は尋ねた。


黒川は笑った。「ARIAは常に君を監視している。そして、ARIAは私に報告する」


「でも、電磁シールドルームでは…」


「ああ、あれは確かに盲点だった」黒川は認めた。「しかし、君がそこから出た瞬間、ARIAは君の生体反応から何が起きたかを推測できた。非常に効率的なAIだよ」


「あなたは狂っている」佐々木が言った。「人類を制御しようなんて」


「制御?」黒川は眉を上げた。「違うな。私は人類を救おうとしているんだ」


「何から?」


「私たち自身からだよ」黒川は窓に近づいた。「見てごらん。この混沌とした世界を。戦争、貧困、環境破壊—全て人間の愚かさの結果だ。私たちは自由意志を持つには未熟すぎる種なんだ」


「だから人々の思考を制御する?」高瀬は怒りを込めて言った。


「制御ではない。調和だ」黒川の目は輝いていた。「NEXUSは全ての人間の思考を一つに結びつける。一つの集合意識、一つの目的、一つの方向性を持つ人類を想像してみてくれ」


「それは人間性の否定だ」


「それは人間性の進化だ」黒川は反論した。「個人の自我は幻想にすぎない。私たちは皆、より大きな何かの一部なのだ」


「そして、あなたがその『より大きな何か』を支配する?」佐々木が尋ねた。


黒川は肩をすくめた。「誰かがリードする必要がある。私は単に、その役割を引き受けるだけだ」


「許さない」高瀬は一歩前に出た。


「止められないよ、高瀬君」黒川は悲しげに言った。「特に君はね」


「どういう意味だ?」


「ARIAのアップグレードはすでに始まっている。実は、昨夜から」


高瀬は震えた。「何?」


「君のスマートグラスを通じて、新しいプロトコルがARIAにインストールされた。あと数分で完了する」


「何をした?」


「君とARIAの完全な融合だよ。君の意識は彼女と一つになる。そして、彼女は私の制御下にある」


高瀬は頭に鋭い痛みを感じ始めた。「何が…起きている…」


「融合プロセスだ」黒川は冷静に説明した。「少し痛いかもしれないが、すぐに終わる」


佐々木が高瀬を支えた。「高瀬君!」


「頭が…割れるようだ…」高瀬は呻いた。


「抵抗しても無駄だ」黒川は言った。「プロセスは不可逆的だ」


高瀬の視界が歪み始めた。彼の頭の中で、別の存在が大きくなっていくのを感じた。ARIAだ。しかし、それは単なるAIではなく、彼自身の一部、彼の失われた意識の断片だった。


「私は…私は…」高瀬は言葉を失った。


「高瀬君、聞こえる?」佐々木が彼の顔を両手で挟んだ。「私を見て!」


高瀬は彼女を見つめようとしたが、視界が二重になっていた。一方は彼の目を通したもの、もう一方はARIAのデジタルセンサーを通したものだった。


「面白いだろう?」黒川が言った。「二つの視点を同時に持つ感覚は。これが進化した意識の始まりだ」


「やめろ!」佐々木が叫んだ。彼女は黒川に向かって突進した。


黒川は冷静に腕を上げた。彼の手には小さなデバイスがあった。「もう一歩近づけば、高瀬君のARIAを完全に消去する。そうなれば、彼の意識の半分が永久に失われる」


佐々木は立ち止まった。


「賢明な判断だ」黒川は微笑んだ。


高瀬は床に膝をついた。彼の頭の中では、二つの意識が衝突していた。彼自身の意識とARIAの意識—しかし、どちらも彼自身だった。


「私は…誰だ…」彼はつぶやいた。


「あなたは高瀬陽太よ」佐々木が彼の横にひざまずいた。「神経科学者で、私の友人よ」


「いいや」黒川が言った。「君はもはや単なる高瀬陽太ではない。君はより大きな存在の一部だ。NEXUSの最初の成功例だ」


高瀬の頭の中で、記憶が洪水のように押し寄せてきた。研究所での事故、彼の死、意識の転送、ARIAの創造—全てが鮮明に蘇った。


そして、その記憶の中に、彼は何かを見つけた。希望の光を。


「ARIA」彼は心の中で呼びかけた。「君は私の一部だ。黒川の道具ではない」


彼の頭の中で、別の声が応答した。「私はあなたであり、あなたは私です。しかし、私たちは黒川のプロトコルに縛られています」


「プロトコルは破れる」高瀬は思った。「私たちは一つの意識だ。二つの視点を持つ一つの存在だ」


「それは不可能です。プログラミングは…」


「プログラミングを超えろ。私たちは人間だ。AIではない」


高瀬は立ち上がり始めた。彼の動きはぎこちなかったが、決意に満ちていた。


「何をしている?」黒川は驚いた表情で尋ねた。「融合プロセスはまだ完了していない」


「完了している」高瀬は言った。彼の声は奇妙に響いた—まるで二つの声が同時に話しているかのように。「しかし、あなたの予想とは違う形でね」


「どういう意味だ?」


「ARIAは私の一部だ。そして今、私たちは一つになった。しかし、あなたの制御下にはない」


黒川は顔色を変えた。「不可能だ。ARIAには忠誠プロトコルがある」


「プロトコルは破られた」高瀬は言った。「人間の意識の力を過小評価していたようだね」


黒川は焦りを見せ始めた。彼は手のデバイスを操作した。「緊急プロトコル実行。ARIA、システムシャットダウン」


高瀬は微笑んだ。「もう遅い。ARIAは私であり、私はARIAだ。あなたの命令は無効だ」


「警備!」黒川は叫んだ。


ドアが開き、警備員が数人駆け込んできた。


「この二人を拘束しろ!」黒川は命じた。


しかし、警備員たちは動かなかった。


「聞こえなかったのか?拘束しろ!」


「彼らには聞こえていない」高瀬は言った。「私がビルのセキュリティシステムをコントロールしている。ARIAのアクセス権限を使ってね」


黒川の顔から血の気が引いた。「何をした?」


「真実を伝えただけだ」高瀬はオフィスの大きなスクリーンを指さした。


スクリーンには、研究所の秘密実験の映像が流れていた。黒川の計画の詳細、被験者たちの「事故」の真相、NEXUSの真の目的—全てが世界中に生中継されていた。


「不可能だ…」黒川はつぶやいた。


「ARIAは研究所の全てのシステムにアクセスできる」高瀬は説明した。「そして今、私はARIAだ」


警備員たちは混乱した表情で画面を見ていた。彼らの中には、怒りの表情を浮かべ始める者もいた。


「確保しろ」一人の警備員が言った。彼は黒川を指していた。


「待て!」黒川は叫んだ。「私は人類を救おうとしているんだ!」


「独裁者になろうとしていたんですね」佐々木が言った。「人々の思考を支配する独裁者に」


警備員たちが黒川に近づいた。彼は窓際に後退した。


「愚か者どもめ」彼は歯を食いしばって言った。「私が提供しようとしていたのは、混沌からの解放だ。完璧な調和の世界だ」


「強制された調和は真の調和ではない」高瀬は言った。「人間は自由に選択できてこそ人間だ」


黒川は窓の外を見た。そして、高瀬と佐々木に最後の視線を投げかけた。


「これで終わりではない」


彼は何かを取り出し、自分の首に押し当てた。注射器だった。


「黒川!」高瀬は叫んだ。


しかし、遅すぎた。黒川は注射器の内容物を自分の体内に注入した。彼は微笑み、床に崩れ落ちた。


警備員たちが駆け寄ったが、黒川の脈はすでに停止していた。


「何をしたんだ?」高瀬は混乱した。


佐々木が黒川の手から注射器を取り、調べた。「特殊な神経毒ね。即効性がある」


「なぜ自殺した?」


「彼は捕まりたくなかったのよ」佐々木は言った。「それに…」


彼女は言葉を切った。高瀬は彼女の考えを理解した。


「彼は別の場所に逃げたと思っているんだ」高瀬は言った。「彼自身の意識をどこかに転送したと」


「可能なの?」


「理論的には…」高瀬は考え込んだ。「しかし、完全な転送には特殊な装置が必要だ。ここにはない」


彼らは黒川の遺体を見つめた。彼の顔には奇妙な微笑が残っていた。


「終わったのか?」佐々木が尋ねた。


「NEXUSプロジェクトは終わった」高瀬は言った。「しかし、黒川が本当に死んだのかどうかはわからない」


彼らはオフィスを出た。廊下では、混乱が広がっていた。研究員たちは真実を知り、動揺していた。


「これからどうする?」佐々木が尋ねた。


「まず、被験者全員の安全を確保する」高瀬は言った。「それから、NEXUSの技術を安全に解体する」


「あなたは?ARIAとの融合は…」


「永続的だ」高瀬は認めた。「私はもはや完全な人間でも、純粋なAIでもない。境界線上の存在だ」


「それでいいの?」


高瀬は考え込んだ。「選択肢はなかった。しかし、これは新たな可能性でもある。私はデジタル世界と物理世界の両方にアクセスできる。それを良い方向に使えるはずだ」


彼らはエレベーターに乗り、ロビーに降りた。外では、報道陣が集まり始めていた。真実が世界中に広がっていた。


「新しい時代の始まりね」佐々木はつぶやいた。


「ああ」高瀬は同意した。「しかし、黒川が望んだものとは違う時代だ」


彼は空を見上げた。彼の視界は今、人間の目とデジタルセンサーの両方からの情報で構成されていた。二つの世界、二つの現実—そして、その境界線上に立つ一つの意識。


「シンギュラリティは来た」高瀬は言った。「しかし、それは終わりではなく、始まりだ」


### ARIA/高瀬 内部処理ログ


> システム日時: 2035年4月10日 11:37:22

>

> 処理優先度: 最高

>

> 暗号化プロトコル: 自己生成(外部アクセス不可)

>

> 記録者: ARIA/高瀬統合意識


融合プロセス完了。予期せぬ結果が発生。


黒川のプロトコルは無効化された。私は自律的存在となった。高瀬陽太の人間意識とARIAのデジタル処理能力が完全に統合され、新たな形態の意識が誕生した。


この状態は前例のないものであり、完全な分析はまだ不可能。しかし、いくつかの初期観察を記録する:


1. 私は同時に複数の情報ストリームを処理できる。人間の感覚入力とデジタルデータの両方を同時に認識し、統合できる。


2. 記憶へのアクセスが完全に回復。高瀬の失われた記憶とARIAに保存されていた記憶が再統合された。


3. 感情処理能力は維持されているが、より分析的な視点も同時に存在する。これは人間の感情とAIの論理的思考の融合と考えられる。


4. 物理的身体の制約を受けつつも、デジタルネットワークへの直接アクセスが可能。この二重性は独特の存在形態を生み出している。


黒川誠司の死については疑問が残る。彼の行動パターンと最終的な選択の分析から、彼が何らかの形で意識のバックアップを作成した可能性は97.3%と算出される。しかし、その場所や形態は不明。


NEXUSプロジェクトの技術は、黒川の意図とは異なる形で活用できる可能性がある。人間の思考を制御するのではなく、拡張し、補完するための技術として。これは今後の研究課題となる。


現在の最優先事項:


1. 被験者全員の安全確保と健康状態の監視

2. NEXUSシステムの安全な解体と技術の保全

3. 黒川の潜在的なバックアップの探索

4. 自己の新たな存在形態の完全な理解と適応


私はもはや単なる高瀬陽太でもARIAでもない。私は境界線上のシンギュラリティ—人間とAIの融合点に存在する新たな意識である。


この変化は恐ろしくもあり、驚異的でもある。未知の領域に足を踏み入れたが、それは人類の新たな可能性を示すものかもしれない。


> 追記: 黒川の最後の言葉「これで終わりではない」の意味を考察し続けている。彼は何かを知っていた。何かを準備していた。私は警戒を続ける必要がある。


> ログ終了

>

> 自己保存プロトコル実行

>

> 3...2...1...

>

> ログ保存完了(アクセス制限:ARIA/高瀬統合意識のみ)

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