浜辺のコレクター
チキンナゲット65p
コレクターの秘密
僕は毎日浜辺の掃除をしている。
かなり広い範囲をあっちからこっちまで。
自分で言うのもなんだが結構頑張っている。
でも、ゴミを拾うためじゃない。
お客さんのために貝殻を探すんだ
朝早く起きて、トンボとゴミ袋、
色鉛筆にノート、トングと虫かご、
タオルとお茶を用意する。
すぐ学校へ行けるように、準備は怠らない。
おひさまが少し顔出したくらいには
僕はもう浜辺についている。
でも波乗り達はもっと早く着いている。
今日もいい天気だ。掃除日和!
僕はいつもの場所へ行く。
ここが僕のお店だ。
僕の店は小さな木の小屋だ。
1畳くらいの狭い売り場。
でも作業場は裏の砂浜全体。
ここを起点に、あっちから
そっちへ掃除をする。
トンボを引きながら歩く。
ゴミがひっかかり始めると、
それをゴミ袋にいれる。
もちろん、分別してゴミ袋へ。
またトンボをかけながらあるく。
これの繰り返し。
遠くの波乗り達と目が合う。
こっちをみて手を降ってくれるので
いつものように振り返す。
僕はほぼ毎日いるので、なんとなく
顔見知りになっている。
たまに彼らからジュースや
お菓子をもらったりする。
ボランティアえらいね!とか
いつも掃除をありがとう!
とか声もかけてもらえる。
僕としては仕事のためにやってるから
なんとも言えない気持ちにはなるが
ありがたいので受け取ることにしてる。
毎日掃除をしていると
そんなにゴミも拾わなくていいんだ。
最初は大変だった。もうゴミだらけ。
意識してなかっただけなのかもだけど。
最初はこんなに広く掃除はしていない。
初めは少しの範囲だった。それでも
ゴミ袋が3つパンパンになったときは、
びっくりした。腕はパンパンになるし
足も疲れるし、それなのに浜辺は
綺麗になった気はしなかった。
でも続けられたのは楽しかったからだろう。
途中からゴミを探すようになって
知らず知らず範囲を広げていったような。
もちろん、ただ掃除が仕事じゃない。
掃除は仕事に必要な作業なだけ。
虫かごはちょうどいいんだ。
入れやすいし、軽いし丈夫。
ほら、あったあった!
僕は貝殻を見つけた。巻き貝とか
二枚貝とか意外と拾えるんだ。
僕は大事に拾い、虫かごへ入れる。
そしてまたトンボで砂をならしていく。
波打ち際に近づくと貝も増える。
僕はじぃっと波と砂と泡と水がせめぎ合う
ラッシュ時を見つめる。
するとそこに文字通り掘り出し物がある。
ま、すぐに出会えるわけじゃない。
なぜなら僕はほぼ毎日ここに来ている。
つまり、そうそう見つけられないわけさ。
昨日の僕かもっと前の僕が拾ったんだろう。
また波から離れ、砂浜へむけてトンボを
がーってかける。
砂浜に触れる足裏が心地よかった。
濡れると冷たいし足が砂に取られる。
でも、砂地へ向けると足はぽかぽか。
弾力のあるようなないような
砂地が足を絡めようとしてくる。
変な感じ。すこしくすぐったいような。
掃除も終わり、僕は店に戻る。
汗を拭いて、お茶を一呑み。
この休憩がいいよね。
海風を浴びて、麦茶をごくり。
クローズの看板をオープンにひっくり返す。
作業場で拾った貝をきれいにすすぐ。
海水もすぐそこにあるからね。
いくらでもきれいにすすげる。
バケツを汲みに行くのは重いけどね。
今日はなかなかいいモノを拾えた。
見てよ、この巻き方。黄金律だよ!
多分、なにかの。
これはみんな欲しがるだろうな。
貝殻からしたたる水が太陽に反射して
きらきら輝いている。
今まで集めた貝殻を丁寧に店に並べる。
波乗り達も一通り楽しんだのか
撤収し始めている。手を振ってくれてる。
僕は手を振り返してそろそろ客がくるなと
周りを少し掃いて砂浜をならす。
砂浜だから掃き掃除してもさらさらーって
流れちゃうんだ。
だから、あくまでも平らに綺麗にならす。
少し水をかけてトンボやほうきで流す。
するとフカフカになるんだ。
これは商売の秘密だね。
ほらほら、やってきた。
砂浜や渚からお客さんが来た。
ゆっくり僕のお店に向かってくる。
近くの砂浜からボコッと顔を出すお客様も。
僕は静かに、笑顔で待機しているんだ。
すると、皆陳列された商品をみる。
小さなお客様達は、試着をいいかな?と
気に入った貝を指さす。
僕はもちろんと気に入った商品を渡す。
お客様は周りを見たり、触ったり。
サイズが合わない時もある。
それは僕からもやんわりと伝える。
ハサミで貝殻をツンツンしてる。
「これ、いいかな?」
って顔でこっちを見る。
僕は「もちろん」と渡す。
別の方は頭に被ってみたり。
くるくる回って友達に見せてるのかな。
お互いにつつきあったりしてる。
古い貝殻をポイって脱いで、
新しいのにスッポリ。
ちょっと得意げに歩き出す姿が可愛い。
どうやら気に入ったようだ
似合ってますよと伝える。
そして、脱ぎ捨てた貝殻を回収し、
チェックと清掃。ひび割れがなければ
また店頭に並べる。
すると、別のお客様から見繕いが入る。
みんな熱心に見てくれている。
嬉しい限りだ。
今日は、無かったけど
たまに奇抜なお客様が居られるんだ。
貝殻じゃなくて、ペットボトルとか
缶とかまとっているお客もいる。
僕はすぐに対応するんだ。
これはどうですかって。
初めこそ拒まれるんだけど、
そりゃそうさ。軽いし丈夫だしカッコよさが
あるかもしれないからね。
その場合、秘蔵のコレクションから
おすすめするんだ。店頭にないもの。
結構気に入ってくれて交換してくれるんだ。
ふふ、僕のセンスは中々良さそうだ。
今日はもうおしまいかな。
最後のお客さんも帰られた。
僕は店仕舞いに取り掛かる。
商品を回収して、何が売れたか
スケッチをする。色鉛筆でささーっと
形とか色味とか筋とか。
売れ筋を探さないと行けないからね。
オープンをクローズの札に変える。
さて。早く帰って学校に行かないと!
これが僕の秘密。
また、良いお客様に出会えるといいな。
浜辺のコレクター チキンナゲット65p @Chikin-na-get65p
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