恋する乙女王子様(恋愛対象外)の愛人目指します

金谷さとる

第1話 学園は八年制

 十歳で学園に入園し、学園で学び、街を知り、この国における成人、十八歳時の将来の指針。それがこのゲームにおけるゴールだった。

 礼法社交にコマをつぎ込めばそこそこの貴族の妻、愛人に。

 街遊びや商売、戦闘にかまければ冒険者や商人に。

 それぞれのルートに攻略可能キャラが待っている。

 だから礼法が足らなくて代筆屋をしながら冒険者の夫を持つ。みたいなエンディングもある。

 もちろん、気がつけば社交がなさ過ぎて独り身エンドも。(貴族籍から抜かれてただの町民として)

 私が目指すのは第二王子の愛人。

 必要なステータスは礼法と社交。広く浅くすべての座学。一定の戦闘力。そしてモラル。

 突出してはいけなくてそれでいて一定以上の成績。

 ゲームではアルバイトをして受講料や補助アイテムを手にしたけれどご令嬢がバイトしていいのか?

 ひと月目の予定のコマを指定しつつ私は予算を思う……あ。私今生でお支払いって概念知らないわ。

 え。もしかしてコマ入れ放題?

 初期で体術と礼法と教養を入れてもいいの?

 あ、ストレス対策もいるけど、え。もしかして週一でダンスとか教会奉仕もつっこんで大丈夫ってこと?

「お嬢様。初月はすこしゆとりをお持ちになった方がよろしいかと」

 侍女クラスを受講しつつ私の侍女を勤めてくれるメープル(同じ歳)が私のコマ割りを見てため息をこぼした。ぎっちりミチミチどこのブラックワーカーかというコマ割りだった。

 一日に埋めれるコマは三つ朝昼夕。私はメープルの助言に従って一日二コマを学園の講座で埋めていく。

 週四回の教養週二回の体術と礼法週一回のダンスと音楽。アルバイト扱いの教会奉仕は一日がかり。

 最後の一日は自由日だ。

 メープルが体術講座に眉を顰めているが初期に基礎体力を上げることができるのは体術とダンスでダンスより体術の初歩講座の方がはるかに安価かつ効果的なのである。

 基礎体力ないとガンガン講座つっこめないしね!

 まずは体力!

 朝教養講座を受講し、昼に体術講座を受講。

 なぜか夕食を食べ忘れました。動きがぎこちないです。こ、これは筋肉痛!

 朝教養講座を受け、昼からは礼法。

 夕食はいただきましたが小指の角度まで意識していたらなにを食べたのか記憶にありません。

 朝教養講座を受講し、昼をあけてから夕方に礼法講座。

 おかあさまによる自宅学習のおかげでかなり楽です。先生に「次の試験を受けるように」と言われました。

 各講座は月に一度上位講座への受験が可能になるのです。第二王子攻略には中級から上級クラスのステータス必須なので初期中に上がれるのはラッキー。

 朝教養講座を受講し、昼からダンス講座。

 お夕飯前にメープルにマッサージしてもらいました。

 朝から体術講座を受け、夕方のコマで音楽講座。

 おなかが痛い……ええ。筋肉痛です。体術の先生に日々の鍛錬を忘れぬようにと言いつけられました。

 そして一日尼僧の制服で奉仕活動です。

 これがモラルガンガンに上がるし、ついでに神学も上がるので先々回復魔法が使えるはず!

 ゲームではモラルと信仰と神学が上がっていったけれど、今はどうなんだろう?

 神学知識や常識は得てはいるけれど、私は信仰とモラルに関して自信がない。

 人を攻略すると考える私にモラルがあるとも思えなければ、ゲーム世界っぽいと思っている時点で信仰なんてお察しだから。

 そして休養日。

 一コマ分柔軟体操をして、メープルに借りてきてもらった図書館の本を読んで過ごしました。


「お嬢様、お友達。おつくりにならないのですか?」

 夕食時にメープルに尋ねられて、基礎値上げに集中し過ぎて出遅れたことに気がつかされました。

 各講座にライバル兼親友候補の同性キャラはいるはずなんだけど、彼女たちって幾つから学園に入園してきてたかわからないんだよね。コマの違いもあるし。

 予定より五コマ講座を減らしてなお体力に余裕のない私はかつてのゲームプレイを思い出す。主人公に無理させ過ぎてたかもしれない。

 だってプレイ初期って資金ないし、倒れる寸前まで疲労管理してドーピングが一番効率的だったんだもん。

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