好きな人の好きな人

ルカ(聖夜月ルカ)

第1話

(二人共、元気かな?)


バイトの休憩中、ふとそんなことを思って、僕は空を見上げた。




高校を卒業し、僕達はバラバラな道を歩み始めた。

幼稚園児の頃からずっと一緒だったから、それはやっぱり寂しいことで…




僕が里奈のことを好きになったのはいつからだっただろう?

告白はしていないけど、僕の気持ちはきっとバレている。

なんせ、長い付き合いだから、何となくわかると思うんだ。

その証拠に、里奈が充希に惹かれていることも僕にはわかっていた。

でも、充希には好きな人がいる。

それが僕だとわかった時は、かなりびっくりしたけれど。




「悠真のことが好きだなんて言ったら、お前、引くよな?」


「え?な、なんだって?」




最初は冗談だと思った。

いや、言っている意味が、今ひとつピンと来ていなかった。

だって、二人でラーメンをすすっている時に突然言われたから。




でも、充希は普段からあんまり冗談を言わないんだ。

それに、奴は、その後に言ったんだ。

夢を叶えるために、高校を卒業したら、アメリカに行くことを。

それを聞いて、さっきの言葉が冗談なんかじゃないってわかったんだ。




「あ、あの…ぼ、僕……」


「……ごめん。気にしないでくれ。

でも、俺の気持ち、話しておきたかったんだ。」


「う、うん。……あ、ありがとな。」


「なんて顔してるんだ。迷惑がってるの、バレバレだな。」


「ち、違う!迷惑だなんて思ってない。

ただ……」


充希は、ゆっくりと頷いた。




「わかってるよ。

……里奈のことが好きなんだよな?」


「えっ!?」


「おまえ、本当に可愛いな。

そんなこと、昔からわかってたぜ。

里奈だって知ってる。」


「えっ!?里奈も、知ってるのか?」


「あぁ、もちろんだ。」


薄々は感じていたけれど、はっきり言われると、やっぱり恥ずかしくて、顔が熱くなった。

まさか、里奈が僕の気持ちに気付いていたなんて…




「……里奈はおまえのことが好きなんだよな。」


充希は、また黙って頷いた。




「里奈のこと、好きじゃないのか?」


「好きだよ。だけど、それは恋愛感情じゃない。身内に対するような気持ちだ。

俺が恋愛感情を抱いてるのは、悠真だから……」


「え……う、うん。」




なんで、よりにもよって、充希は僕の事なんて好きになるんだよ。

充希が里奈を好きになったら…確かに、僕は失恋してしまうけど、里奈は幸せになれるのに。




「里奈には言わない方が良いんじゃないか?」


僕がそう言うと、充希は思いっきり、ラーメンをすすり始めた。

答えたくないのか…

僕も同じように残りのラーメンに口を付けた。

先にラーメンを食べ終えたのは、充希だった。




「……もう話した。」


「えっ!?」


「里奈に告白された時、正直に話した。」




里奈が充希に告白?

いくら幼稚園児からの幼馴染だとはいえ、告白には相当な勇気が必要だったはずだ。

それなのに、断られただけじゃなく、さらに、充希が俺の事を好きだなんて聞いたら、里奈はすごくショックだったんじゃなかろうか?




(あ……)




そういえば、体調が悪いって言って、里奈が学校を休んだことがあった。

本人は夏バテだって言ってたけど、あいつは体が丈夫で、暑さも全然ヘッチャラなのにおかしいなって思ってたんだ。

きっとあの時、告白したんだな。




「里奈は…なんて?」


「……わかったって。」


「それだけ?」


「うん。」




そうだよな。そう言うしかないよな。




(里奈…可哀想に……)




僕には何も出来ない。

充希の気持ちに応えることも、里奈を慰めることも。




やがて、春が来て、僕たちはバラバラになった。

僕は東京の大学に。

里奈は地元の看護学校に。

そして、悠真は、アメリカに。




次に会えるのがいつかはわからない。

その時、三人の気持ちがどう変わっているのかもわからない。

ただ、今のところ、僕の気持ちは変わっていない。




(里奈、充希…また、必ず会おうな…)


僕は、青い空に向かって、心の中で呟いた。

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好きな人の好きな人 ルカ(聖夜月ルカ) @rucca

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