嘘つきが消えた日

リトル

プロローグ

エイプリルフールが近づくたびに、僕の心は不安と期待で揺れ動く。毎年、8時になると必ず、僕たちはグループチャットに一つの嘘を投げ込む。それが恒例行事となり、どんなに年齢を重ねても続いていた。


小学生の頃から始めたこの遊び。今ではもう、ただの笑い話になっているけど、僕たちにとっては特別な意味があった。あの頃は、みんなが一緒に笑い合い、毎年のように目を輝かせて嘘をついていた。でも、そこには一つだけ、忘れられない出来事がある。


「エイプリルフールの嘘で、『消えた友達』がいるって知ってるか?」


その話を最初にしたのは、Aだった。いつも明るくて、少し抜けているAが突然真剣な顔で言った。


その言葉が、みんなの記憶を引き寄せた。確かに、小学生の頃、僕たちのグループに一人、いつも一緒に遊んでいたはずの友達がいた。でも、今振り返ると、その子の名前も顔も、どこか曖昧で思い出せない。あの時、誰も気づかなかった。気づいていたのは、消えたその子だけだったのかもしれない。


「嘘で消える?そんなわけないだろう」


Bが笑って言ったが、Aは黙ってうなずいた。


「だって、何年も前のエイプリルフール、その子、突然いなくなったんだ。俺たち、全然覚えてないんだよね。でも、確かにいたんだ」


その話は、すぐに冗談で終わった。しかし、今でも僕の心に小さな違和感が残っている。毎年エイプリルフールになるたび、その子のことを思い出す。そして、毎年8時になると、あの頃のように嘘をつくのが怖くなる。


今年も、またあの時間が来る。僕たちはまた、チャットログに何の気なしに嘘をつくのだろう。それが一番楽しいから。そして、いつものように、その嘘が終わるまで、何事もなかったかのように。


でも、今年は何かが違う気がしてならない。

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