僕はMadmateを飼っている

OROCHI@PLEC

僕は狂人を飼っている

 僕は貴方と会った。

 それは現実でもなく、夢の世界でもなく、さまざまな想いが渦巻いているネットの世界だった。

 でも、僕は確信して言えるだろう。

 貴方を好きだったと。


 貴方と初めて会ったのは、とあるアプリのオープンチャットだった。

 メンバーが多いこともあって、最初はあまり気に止めなかった。

 でも、チャットで膨大な会話が行き来する中、少しずつ貴方に惹かれていく自分がいるのを感じた。


「ネットの人を好きになるなんて、頭がイカれている。実際に会ったこともないのに」


 少なくとも僕はそう考えていた。

 でも、それでも、どうしても、貴方と話すのを楽しみにしている自分の気持ちを抑えることができなかった。


 数週間が経ち、遂に、もっと話したいという気持ちを抑えることができなくなり、オープチャットではない、個人のチャットで話そうと言ってしまった。

 貴方はそれを受け入れてくれた。

 でも、そうしない方が良かったのかもしれない。


 貴方と話した毎日は楽しかった。

 毎日、趣味の話とか、流行りのゲームの話とかをして。控えめに言っても幸せだった。


 僕に、色々相談してくれたのも嬉しかった。

 普段頼られない僕にとって、頼られるっていうのはなんだか胸が暖かくなった。

 

 一緒に流行りのゲームもした。

 その時に初めて貴方の声を聞いたけど、澄んでいて、可愛くて、頭がおかしくなりそうだった。


 そして、遂に気持ちを抑えられなくなって、僕は貴方に……愛の告白した。

 初めて、人に、貴方に、恋の言葉を紡いだ。

 貴方は……それを…受け入れた。

 その時、受け入れてくれなければ良かったのに。


 そうすれば俺は……。


 それからの日々は、幸福という言葉では物足りないぐらい、言葉では言い尽くせないぐらい、僕は幸せだった。

 毎日貴方に好きって伝えられて幸せだった。

 好きって言ってもらえて幸せだった。

 いろんな感情がごっちゃ混ぜになりながらも、幸福だった。


 でも、貴方はいなくなった。

 別れの言葉も言わずに、僕のメッセージに既読も付けずに、いなくなった。


 僕はその理由を、自分が思いつく限りの、全ての方法を使って探した。

 でも、結局分かったのは、僕のことが嫌いだと言うことだけだった。


 そして、僕は壊れた。

 何も考えられなくなった。

 苦しみ、嘆き、祈った。

 それがどうか夢でありますようにと。

 貴方のことを考えると体の震えが止まらなかった。

 涙はいつの間にか出なくなっていた。

 食欲もなくなっていた。

 心は空っぽだった。

 

 叫び、求め、狂った。


 そして、死を、切望した。

 

 遂に、僕はナイフに手を掛けた。

 自らの手でこの人生を終わらせるために!


 おそらくこの時に、僕には、もう一人のが生まれた。

 

 その俺は、狂っていた。

 その俺は、貴方にとてつもない執着心を抱いていた。

 その俺は貴方を死ぬほど愛していた。

 僕はその時初めて気づいた、自分はというものなのだと。


 その俺は、時々僕に変わって現れる。

 その俺は貴方を探し求める。

 そして、僕が死を求めるのを邪魔する。

 

 俺は囁く、このままで終わって良いのかと。

 僕は答える、嫌だと。

 だけど、そう思う自分も嫌だと。

 

 最近、僕が少しずつ、俺になっていくのを感じる。

 僕は俺に抵抗する。

 

 もう終わったことだ。

 早く忘れた方が自分のためになると。

 でも同時に思う。


 貴方とまた話したいと。


 と。


 そんな僕は、今日もまだ生きている。

 

 あれから、幸せに対して拒否感を覚えた。

 それが壊れた時のことを覚えているから。


 あれから、人と話すのが苦手になった。

 これ以上誰かを好きになりたくなかったから。


 それでも俺は止まらなかった。

 俺は、幸せを求め、愛を求める。


 僕とは逆の存在だった。


 そして、僕には今でも言えることがある。


 貴方を愛していると。


 そして、俺には今でも言えることがある。


 貴方を恨んでいると。

 そして、貴方を諦めないと。


 本当は僕は、俺だったのかもしれない。

 ただ、俺と言う化け物が僕と言う皮を被っていただけだったのかもしれない。

 そして、僕が俺になる日はそう遠くはないだろう。おそらく。

 

 願わくば、俺となったとしても、僕のままだったとしても、また、貴方と話せますように。

 

 僕はMadMateを飼っている。


 僕はMadMateを飼っている。


 僕はMadMateに

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