死神の掟
烏丸りえ
『死神のはるかさん』
Ⅰ-1
明日の仕事の確認のために、死亡予定者リストが書かれたノートのページをめくった瞬間、私は呼吸を忘れた。
彼の名前がある。
私の好きな人だ。
「同じ名前だね」
初めて声をかけられたのはクラス替えの日。
隣の席に着いた直後だった。
そこには人好きのする笑みを浮かべた少年がいた。
そんな自分の名前は偶然目に入った広告からとったもので、正直に言えば特に何の思い入れもない。
人間界で生きていくために必要だから、つけただけのこと――だったのに。
「野上さんの漢字はお日様の香りって感じがしていいね」
たったそのひとことで、私の心がとても満たされたことを覚えている。
死神に対して似合わないことを言う人だな、と照れ隠しに考えていると、返事をしない私が引いていると思ったのか、
「あ、変態っぽかった?」
なんて言うもんだから、私もそのときは咄嗟に「変態!」とだけ返しておいた。
それからよく話すようになり仲良くなるまでに時間はかからなかった。
そして、人間でない私が一線を越えた感情を抱いてしまうのも。
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