陽性変異 Vol.2
白河雛千代
第一変『陽性変異 Vol.2』
第1話
脚がなかった。
よく見れば、今の私と同じくらいに肌は青白く、その身体は薄ぼんやりとしている。
腰から先が、なにやら煙のようにひょろひょろとしていた。それでいて皐月ときたら、律儀にも両手をくの字に折り曲げて、その額には丁寧に白い三角巾までつけているのだ。
脳裏に浮かぶイメージはただ一つ。
まさしくそれを目にして恐れおののく怪談の主人公にでもなったように、私は、彼女を見上げて、
「こ、これって……皐月、」
「うん。みよちん、私ね——」
二人、呆れた声が重なった。
——その数時間前。
フェンスが阻む空の上。
ひらひらと舞い落ちてくるそれを、私はぱっと手に取り、眺めた。
綿毛だった。
白い、綿毛だった。
「みよちーん、どこー?」
後ろから声がして、振り返るとペントハウスの中から皐月が出てくる。
「いた、みよちん」
まるで私がお母さんでもあるかのような安心した顔で皐月は言って、
「かえろ」
「うん」
私は機械のような愛想のなさで答えて、皐月の後から日陰に入る。
終業式、前日のことだった。
世間は今、春先から増え続ける超常現象のことで忙しいらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます