第11話

攻撃、と言う名のイジメは“無視”じゃない。




“無私”だ。




あたし自身の考えや思いを無にする、“無私”。





いくらあたしが素直でも。従順でも。



これが。

モナ達があたしに行う行為が人権を侵害するコトだと、気づかないはずがない。




例えいくら馬鹿なあたしだとしても。

こんな所にのこのこついて来ちゃうあたしでも。




コレは。「仲良しのお友達」にする行為にしては異常じゃないかと、疑ってしまう。

何なら。コレが「仲良しのお友達」にしてイイこと、ではないことくらい分かってしまう。

コレが「仲良しのお友達」として“仲良く遊んでる”状態ではないことくらい、気づいてしまうワケで。




「あたしじゃない?あのねぇ、あたし、じゃなくないの。だって藤くんが言ってたの。“俺はゆずが好き”って」




「だからっ…!」




ゆず、なんて名前の子、世界中探せばいくらだっているじゃんか!

ゆず、なんて掃いて捨てるほどあるに決まってるし、なんなら市役所に行って確認でもしてみればいい。



日本に住む「ゆず」がどれくらい存在するのか、確認くらいはしてほしい。



でもこの知能レベルの低い高校に通ったりしちゃってるモナには、調べる、確認する、なんて言う証拠の集め方は頭の隅にもないらしい。




あたしをその“ゆず”だと勝手に決めつけちゃってる。

勝手に確信しちゃってる。




”だってモナの周りの“ゆず”は、アンタだけだもん”




と。前にアホを晒していたしね?

そんなコトを言っちゃって、自分で自分の馬鹿さ加減を晒しちゃって、暴露しちゃったしね?

だからアンタがそのゆずでしょ、ってね?



ほんっと迷惑。

ほんっと傍迷惑もいいところ。




だってあたしは。

その藤くんとやらが口にしたゆずは、あたしじゃない。

間違ってもあたしではない、と確信できる。



だって違うから。

その顔も姿も知らない藤くんとやらは、絶対あたしの知り合いなんかじゃないから。





だってあたしには、間違ってもモナみたいな女に手を出すような馬鹿な男友達なんていないし。

こんな。明らかに不自然すぎるクネクネ女に引っ掛けられるような男友達・・・・・・。

そもそもあたしに男友達なんて、まずいないし。一人としていないし。




だから親しげに「ゆず」なんて下の名前を呼ばれる義理も。

何なら。「好き」なんて言われちゃうような筋合いも、関係も、覚えもないワケだし。





よって。

こんな攻撃をあたしにする暇があるなら、とっとと別のゆずを当たってほしい!他を当たってほしい!

そうしたら今よりずっと早くに、あんたの彼氏が言ったことがわかるじゃん!!真相わかるじゃん!



あたしみたいなただのふつーな人間を攻撃してるよりずっと有意義だし、賢いと思うけど?!

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