第37話

お兄さんと話していたら気付けば外は暗くなって、思った以上に会話が弾んでいたことを知る。


半分以上アイの話をしていたわたしたち。


藍佑を溺愛しているお兄さんは、アイの声が出なくなったと知った時、どんな感情に飲み込まれたんだろう。


出会った時から喋れなかったアイ、ある日突然喋れなくなった藍佑。わたしが知っているのはもちろん、最初から喋れなかったアイの方だ。


お兄さんは優しい笑顔の裏で、アイに対して何を思っているんですか。


こんなことを聞けるはずが無いのは分かっているけど気を抜くと尋ねてしまいそうになる。


アイの声が出なくなった時、どう思いましたか?


もしこんなことを尋ねてしまったらその時は自分のことを殴ってやるんだ。




「きょう、アイって何してるんですか?」




けっきょくわたしが聞いたのはアイのこと。


休みの日でも藍佑のことばかりの自分を心の中で笑った。わたしの中に、それも一番真ん中の深いところに勝手に住みついているなんて、いつか家賃を払ってもらわなきゃいけない。


わたし、アイのことばっかり考えてるの、わたしの心に勝手に住み着いて、家賃払ってよね。って言ったとき、アイはどんな顔をするんだろう。


うん、って笑って、本当にわたしにお金を渡そうとしてくるかもしれない。


アイって、ばかかわいいよね。

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