第8話水中水族館
バスに乗った俺たちは水中をゆっくり進むバスの車窓からみえる
景色にうっとりしていた。さっきのハゼ人間は一番前の席でふんぞりかえって
まんがのようなものを読んでいる。どうやらこのバスは自動運転らしい。
「先輩、きれいですね。魚たちが優雅に泳いでいます。」
「ああ、あ!ウミガメがいるぞ。」
「ほんとですね!まあ可愛い。子供連れです!」
いつも通りに俺の隣にの席に座ったエレナと景色を楽しみながら談笑する。周りを見渡すと、普通の人間が9割だがヒレが生えた人が少数いた。
そうして十分ほどバスに乗っているとなにやら海底に横に広い城のようなものが
建っている。その先端についているカプセルのようなものに向かってバスが進む。
バスがカプセルの中に入るとブシュブシュという音とともに水が抜かれていった。
バスがついているヒレを閉じて着地する。どうやら着いたみたいだ。
「ぎょりよーありぎゃとねー!」
と、ハゼ人間さんが手を振ってくれているのを見ながら、バスを降りた俺たちは、
カプセルから続く入り口の扉に進む。
あのハゼ人間、めっちゃいい接客だな。見ているこっちが癒されるわー
扉を抜けると今度はふつうの人間のお姉さんがいた。
「こんにちは!水中水族館へようこそ!ここで受付を終えたら自由に
お楽しみいただけます!お帰りの際もこちらにお越しください。」
ということで受付で会計を済ませた俺たちは
「ひゃっほー!僕めっちゃ楽しみだよ!まずはこのクラゲコーナーにいこ!」
と、はしゃぎまくるレイに引っ張られながら歩みを進めた。
クラゲコーナーではドーム状になったガラス張りの建物の周りにクラゲが
優雅に泳いでいた。幻想的なけしきにうっとりする。
「うわあ、綺麗だねえ。あっ!レイ!走っちゃダメだよっ。」
テンションがぶち上がったレイがドームのなかを叫びながら走り回っているのを、
リサが懸命に止めようとしている。こら、周りのお客さんの迷惑でしょ。
やめなさい。
「先輩、綺麗ですね。」
とエレナが走り回るレイがまるで存在しないかのように俺の方にもたれかけてきた。
エ、エレナさん。あの、そんな近づかれると、はっ、いい匂いがするっ!
「しょ、しょうだにゃ。」
やばい!動揺のあまり噛んでしまった!
これではさっきのハゼ人間と滑舌がいい勝負ではないか!
「ふふっ、さっきの方の真似ですか?変な先輩。」
ふおおおおおお、恥ずかしいいいいいい。俺もレイみたいに奇声を上げながら
走り回りたいいいいいいいいい。とか思っていると、
「よーし!次は熱帯魚コーナーだああああああ!!」
と走り去って行くレイ。
、、、。追いかけるか。
そうして熱帯魚コーナー、哺乳類コーナー、甲殻類コーナーを走り回るレイについていきながら制覇した。
そして俺たちはこの水族館の目玉である巨大イカの捕食見物ショーを見に行った。
さっきのバスの小型版の車のようなものに乗り込んで専用の檻の中に入った
俺たち4人。俺たちが捕食されるのでは?と不安でいると
「これ、私たちが食べられたりしないよね。」
と震えながら代弁してくれたリサ。
それなーー!!
「大丈夫ですよ、この車はクジラを模して作られているので。イカはふつう、
クジラを食べないですし。」
と、エレナさん。いやいやエレナさん。イカは普通、車より大きくなりませんよ。
リサと俺が震えながら、レイは喜色満面で、エレナはいつも通りにしていると
檻の上の方から俺たちの後ろに赤いもやとともに豚のような生き物が落ちてきた。
それをびびりながら眺めていると、
水中の遠くの方から大きな黒い影が見えた。
それはどんどん近づいてくる!
影がはっきりとしてきた!
最初に乗ったバスの何倍もある巨大なミサイルのようなものがすごい速度で近づいてくる!
そしてぶつかる!
かと思いきや間一髪当たらず!
しかし横切った瞬間車くらいある巨大な目がぎょろっとこっちを見ていた。
「きゃゃああああああああああ!!」とリサ。
「ぎゃああああああああああ!!」と俺。
「あははははははは!!」とレイ。
無言のエレナ。
正直言おう。ちびった。
気づいたら豚も、巨大イカもいなくなっていた。
車が自動で動き、やがて檻から出て水族館の中に戻ってきた。
「なかなか迫力がありましたね、先輩。きた甲斐がありました♪」
「ああ、なかなかだったな。」
小鹿みたいに震えている足を隠しながら上機嫌なエレナに返事する。
リサも、レイにひっついて震えている。よかった、俺だけじゃない!
そうして、俺たちは水中水族館を後にしたのだった。
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