第21話

「だけど……桃は別だからな」


蒼が僅かに眉を寄せて、私の顔を覗き込んでくる。


「うん、分かってるよ。明日楽しみにしてて」


そう言うと、安心したように表情を緩める蒼。


普段どんなに周りの人に冷たくても、私にだけは優しいって知ってるから。


私が食べてって言えば、嫌いなイチゴタルトだって食べてくれたもの。


だから、たとえ甘ったるいチョコを渡したとしても、無理してでも食べてくれるよね。


「ああ、こんなに待ち遠しいバレンタインは初めてだ」


私だけに向けられる優しい眼差しに、優しい言葉に、胸がキュンと鳴る。


「私も! だって、一日中、蒼と一緒にいられるんだもん」


蒼の存在をもっと全身で感じたくて、彼の腰に手を伸ばして抱きついた。

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