それは所謂、よくあるあれ。
@Hana4gure
1話
第1話
私、
同じ年の4月に
私が彼を初めて知ったのは、
高校に入学して少し経った春のことだった。
前を歩いていた男の子の集団から、一人、
パックのカフェオレを飲んでいた男の子が、
急に立ち止まった。
少し不思議に思いながら、隣を通り過ぎようとすると、
「綺麗やな」
彼は小さな声でそう言った。
彼が見ていた先にあったのは、
廊下の壁に貼られたたった一枚のポスター。
それは、私が作った美化委員のポスターだった。
きっと、入学したばかりの一年生は、
新生活や友達作りに気を取られ、
そこにあるポスターが
先週と変わったことにも気づいていない。
そんな、あってもなくても
気づかれないようなポスターを見つけ、
彼は足を止めてくれた。
「何してんだよ、宗介。置いてくぞ」
「おう。今行くわ」
後ろからそんな彼の声がした。
友達に呼ばれ、私の横を通り過ぎた彼の顔を
横目で見ると、私はその顔に見覚えがあった。
きっと、その時からだ。
私が彼を無意識に目で追うようになったのは。
彼の名前は、
彼は、同じクラスの男の子だった。
ポスターを見つけてくれてうれしくて、
でも、通り過ぎた高尾くんに
声をかけることもできなくて、
ましてや、ポスターを作ったのが
私だとも言い出せなくて、
気づけば、ただ彼を
目で追ってしまうだけの日々が流れていった。
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