~outro~
side直
第24話
藤「由文のこと、好きだったのか」
増「うん」
升「…本気で?」
増「本気。面倒くさがりの俺がわざわざこんな修羅場に首突っ込むぐらい、本気」
張本人の俺は一言も発さないまま、終わりに向けた会話は淡々と進んでいった。
藤「今回、だけ?」
増「寝たの?そうだね、今日が初めて」
升「無理やりに…ってわけでも、ないんだな」
増「それは…正直わからない」
藤「何だよ、それ。好きなら…」
俺の耳は全ての言葉を上滑りさせて、グルグル浮遊しているような錯覚に陥っていた。
現実逃避ってこういう状態を指すんだろうか。
増「問題は誰が一番好きかじゃなくて、誰が選ばれるかじゃないの?」
升「…誰か、選ばれるのか。全員が悪者じゃないか」
さっき藤くんは、好きだと答えてほしかったんだろう。
俺だって、本当は好きだと言いたかった。
でもそれを4人揃ったこの場で口にしたら、永遠に全てを失ってしまう気がした。
升「わかってるよ…。チャマが本当は誰のことを想ってるか知ってて、その上で付き合おうって言ったのは、俺なんだから」
藤「…それにあいつが応えたのは事実だろ。俺が現れなきゃ、突然横取りしなきゃ、おまえらは幸せに過ごしてたはずだろ?」
増「横取りって言われると、いきなり俺の悪者度が上がるけどね」
いや、それで良かったんだろうか。
そうすれば、もしかしたら藤くんは全てを捨てても、俺を連れ去ってくれたんだろうか。
直『…どうして、誰も俺を責めないの。みんなして自分が悪いって言い合って…』
独り言のようにそう言う俺に、一斉に視線が集中する。
藤「自業自得だろ。少なくとも俺は」
升「バカか、俺もだ」
直『何それ!それ流行ってんの?そんなふうに言って、誰が喜ぶの?』
升「チャマ…俺は、おまえのために…」
直『俺のため!?ふざけんなよ、俺は嬉しくねぇよ!』
勝手なのは全員同じだった。
3人が俺を好きだと言ってくれているのも、そして俺を大事だと言うあまり俺の心を置き去りにしているのも、また同じだった。
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