第2話 壊すか使うか

 孝也がひと言も話さないのは……私がゴミ箱に投げ捨てたが何なのか知っているからだろう。


「どうせ、引っ越し屋が来るのは明日だし、今日はもう止め!アンタも部活行ったら!」


「……うん」


「どうしたの? まだバイト代、欲しがってんの?」


「そうじゃなくて、このベッド壊すんだろ?! お姉一人じゃ無理だ!」


「そうねえ~男手が要るか……それともベッド壊す事自体を止めるか」


「ベッドは場所取るから新居には置かないって言ってたじゃん!」


 私はベッドに腰を下ろした。


「今日はこのまま寝て……明日、元カレ男手を呼ぶよ!『お前もあのベッド使ったんだろ!』って」


「やめろよ!!!」

 その言葉と共に私は孝也に物凄い力で押し倒されていた。


 孝也の血潮のうねりが彼の手のひらを通して私の肩に伝わって来る。


 どうしよう??


 このまま行ったら……


 責任を取るのはやっぱり私の方だよね……


 彼の家族と私の家族の顔が頭に浮かぶ。


 まあ、それもありかな……



 私がそっと目を閉じると孝也は私にキスの雨を降らせ、ので……目を閉じたまま私は彼の耳元へ囁いた。


「ダメ!その前にゴミ箱の中をまさぐって見つけて来て! そしてちゃんと手を洗って!」




          

                             おしまい



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まさぐる 縞間かおる @kurosirokaede

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