第12話

そうする事で、ぽっかり開いた穴を見て見ぬふりしていたのかもしれない。



その穴が自分も気が付かぬ内に大きくなって、兄に逢いたくなって。


そして、亡くなった兄が答えてくれる筈もないに、何かの答えを求めて


この交差点へ事故後初めて来たのかもしれない。




交差点の向こう側には、もうすぐ闇が迫ってくるであろう山々が、夕焼けに染まっている。




――逢魔ヶ刻





兄が亡くなった時刻は、違う言い方をすると、こんな感じだったろうか。





U美は、自分以外誰もいない交差点に 先程の兄に似た声と手の温もりを感じながら

足元に落ちた、黄昏色に染まる菊の花を見つめていた。

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