第7話 死者の囁きと、魂を縛る鎖
死者の王との死闘を終えたせつなは、墓所の中心で静かに立ち尽くしていた。倒したはずの王の残滓が、なおもその場に漂い続けている。
──まるで、彼女を見定めるように。
「……何か、変だ。」
ケイルが剣を握る手に力を込める。先ほどの戦いで致命的な一撃を与えたはずなのに、死者の王の魂は完全に消滅していない。むしろ、その存在感はますます強まっているようにすら思えた。
「……汝は、新たなる王となるべき者か?」
突如、闇の中から響く不気味な声。せつなは息を呑み、背筋を冷たい何かが這い上がるのを感じた。
「……誰?」
「問うまでもない。汝はすでに、その力を手にしている。」
次の瞬間、足元の地面が黒く変色し、無数の幽鬼の手がせつなの足を掴んだ。
「っ……!」
もがこうとするが、動けない。霊的な力が彼女の体を縛りつける。
ケイルが剣を振るい、せつなを縛る亡霊たちを斬り払おうとするが、刃は虚しく空を切るだけだった。
「チッ、物理攻撃は効かねぇのか!」
「大丈夫、これは……私の問題。」
せつなは静かに目を閉じ、精神を集中させた。
“死者の王を討った者には、その力が継承される”
そんな言い伝えを聞いたことがある。だが、それが何を意味するのかは、まだ彼女自身理解していなかった。
──力を受け入れるのか、それとも拒むのか。
「……私に、選択を迫っているの?」
闇の奥から無数の影が現れる。それは死者の王の記憶の断片――彼のかつての姿。
かつて彼も、せつなと同じように霊魂を操る力を持ち、そして”王”の座に導かれたのだ。
「汝がこの力を継ぐならば、王として我らを導け」
「……王?」
せつなは拳を握る。そんなものになるつもりはなかった。だが、この力を拒むことができるのか?
今ここで逃げたら、きっと次はこの墓所を守る者がいなくなり、また新たな死者の王が生まれる。
「……だったら。」
せつなは静かに呟く。
「私は”王”にはならない。けど……この力は使わせてもらうわ。」
その瞬間、彼女の足を縛っていた亡霊たちが一斉に弾け飛んだ。
黒き鎖が解き放たれ、せつなの魂がさらに研ぎ澄まされていく。
「私は墓守。死者を弔い、安らぎを与える者……。お前たちを、苦しみから解放する。」
彼女の手の中で「死者の証」が淡く輝く。
「安らかに眠れ。」
せつなが解き放った霊の波動が墓所を包み込み、全ての亡霊たちが光となって空へと昇っていく。
そして最後に、死者の王の残滓が静かに微笑んだように見えた。
「……ならば、汝に託そう。」
そう呟いた次の瞬間、せつなの胸に黒い紋章が刻まれた。
それが、彼女の新たな”力”となるのを、彼女自身まだ知らないままに──。
次回予告:新たな力を手に入れたせつな。だが、その代償とは……? 次なるクエストの幕が上がる!
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