罰ゲームで校内一の美少女に告白したらなぜかOKされて幼馴染と妹が修羅場
高海クロ
プロローグ
僕が通う
海からそれほど離れていない位置に建てられていることもあり、風が運んでくる潮のにおいと若干のべたつきは、この校舎の屋上というラノベやアニメではもはや定番と化している青春スポットを閑散とさせている大きな理由の一つだ。
特に昼休み――昼食を摂る場所としての人気はそれはもう酷く、友達のいない日陰者たちの便所飯を加速させる一端を担っているとさえ言えるだろう。
しかしこの僕――
理由はもちろん、『他の人がいないから』に尽きる。
何を隠そう、僕は陰キャなのだ。友達もいなければもちろん恋人もいたことのない、典型的弱者男性。ぼっち。日陰者。
それがこの僕、春野凛斗という人間だ。
爽やかな名前とは対照的にじめっとした印象の長い前髪、実用性重視のメガネ、やや猫背。
そんな僕が校内で他人の目を気にすることなくのびのび過ごすことのできる場所は、この昼休みの屋上しかないのである。
誰もいない屋上。浜風に頬を撫でられながら、幼馴染が拵えてくれたお弁当に舌鼓を打つ。
この時間の何たる幸せなことか。
この幸せな時間は、きっといつまでも――少なくとも、この学園を卒業するまでは続くのだろう。
僕はそう信じて疑わなかった。
「はい、あ~ん♡」
「あ、あーん……」
「えへへ♡ 凛斗くん、おいしい?」
「うん、おいしいよ」
……疑わなかったのだが、信じていれば必ずそうなるというワケではないらしい。
今僕の隣でお手製弁当をあーんしてくれて、「えへへ」と可愛らしく照れている彼女は、高等部内でもナンバーワン人気と謳われる美少女、
色素の薄い銀の髪を長く伸ばしたその少女は、名前の通り深雪のように白く綺麗な肌、冬晴れの空のごとく澄み切った広い心の持ち主で、なるほど中等部の頃からナンバーワン美少女の座を譲らなかったのも納得である。
しかし納得できないことがひとつだけ。
なぜそんな美少女が僕と一緒にお昼を食べていて、しかも「あーん」なんてしてきているのか?
それは、約二十四時間前――昨日の昼休みにまで遡る。
「ね、ね、凛斗くん。次はなにが食べたい??」
「あっうん、今明らかに回想入る流れだったよね?」
「ん〜?」
顎に人差し指を添えてコテンと首を傾ける冬宮さん。あざと可愛い。
……それはともかく、気を取り直して――それは昨日の昼休みにまで遡る。
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