第8話
それから2、3ヶ月に一度程手紙は届く。
都市へ向かい2年が経過した。
1年に3度帰ってきたが多いのか少ないのか。
なにをしているのか今も知らない。
仕送りを会うたびに渡されるが、お金には困ってない。
「たまに宝石が混じってるのよね」
仕送りではなく綺麗なものに反応しずらい。
「がっかりするから貰うしかない」
あの、しょんぼりした顔。
あの顔にわたしは弱いのだ。
我ながらチョロい。
3年目に突入した時、迎えに来るという手紙を寄越された。
なんのことかと首を傾げ、約束なんてしてないよと返す。
帰ってくるまで待っていると、手紙と共に本人が来た。
目を白黒していると馬車から降りてくる彼に、目をしばたかせる。
すっごい背が伸びている。
スタスタと軽やかにこちらへ来ると、説明とやらをやっと始める相手。
こちらはまだすべてを飲み込めてないというのに、次々出てくるそれらに目をしばたかせる他ない。
待って待ってと辛うじて出てきたそれに、彼は悪い笑みをウカベル。
イタズラが成功した妖精の様だ。
彼はくくっ、と笑うとさらに距離を詰める。
(かっこよくなっちゃって)
染み染み。
感慨深い。
こちらへ手を差し出してきた。
久しぶりの手の温もりに嬉しさが溢れてくる。
おかえり、と声をかけたらああ、と返された。
それと、迎えに来たぞとかけられたので、手紙の件なのだと思い出す。
なんの迎えかと聞くと、ニヒルな笑みをまた浮かべる。
ユイスは意味ありげに顔を覗き込む。
「お前と結婚する」
「……??、けっ??こん?」
脳が理解を拒む。
何を言ってるんだこの子は。
混乱するわたしを置き去りにして、話を進める。
コラコラ、すすめないで。
「向こうで起業した」
と、言われても。
「き、ぎょう?」
会社を起こしたということか。
「ああ。ここで仕事ができる様に手筈も整えている。迎えに来たのは起業した奴らにお前を紹介する為だ」
色々言われても全部初耳なのである。
「ちょ、ちょ、ちょ、待って、待って、本当に、すとっぷ」
呂律が回らない。
いった、舌噛んだ。
ま、待ってと声を変える。
「かくにん、させて。ユイスはわたしが女として好きって言ってる?」
たずねると彼はあぁ、と肯定。
あー、そうか。
ああ、と項垂れた。
「そう、なのね」
わたしを好きなんだ。
それは養い親だからじゃないのか、と口にしそうだったが、耐えた。
考えた時に彼の眼光の圧が強くなったもん。
「疑っているな」
「疑っているっていうか。特殊な好みをしてるなとは、思ってます、ハイ」
あまりにも追随を許さぬ目で言われて、素直に喋る。
それに、ふん、と仰反る相手。
「そんなのは、まぁ、予想していたが」
していたんかい。
「わたしなんていき遅れだよ」
この世界は、十六や十八で世帯を持つなんてよくある。
「それがなんだ。どうでもいい」
「それに、わたしはあなたのおかあさんでしょ」
「は?んなわけねぇだろ」
否定されて混乱。
「え?えええ」
きっぱり否定された。
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