第25話

車に乗り込むと、思わずため息が漏れる。



多分きっと、これが一番の俺のわがままであり、望みなんだろう。





「どうしたの?ため息なんて」


「なんでもない」





たまには車以外で移動したい……なんて、口が裂けても言えない。



返される言葉はわかりきってるし、いくら中学に上がったからといって、またあの日のようなことがないとは言いきれない。



実際、危険な目に遭いそうになったことが何度かある。



それでも思ってしまうのは、俺が外の世界を知らなすぎるからだ。



学校以外、どこかへ行く時は必ず母さんかボディガードが一緒。友達と遊ぶ時も、それは変わらない。




いつまで続くのだろうか。この、「見せかけの自由」は。





「時間が取れるのは一時間だけよ。質問することは決まっているんでしょう?」


「ちゃんとリストにしてるから大丈夫。一時間もかからないよ」


「そうなの?お父様、あなたの為に色々とお考えのようよ。いずれあなたがお父様の後を継ぐのだから、しっかり学んでいくのよ」

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