第23話

いつも父さんは仕事優先で、学校の行事に来たことはもちろんない。



会社から帰ってくるのは俺が寝たあと。起きてから挨拶を交わすくらいで、すぐ家を出ていくのがお決まりのパターン。



会話という会話は、覚えていないくらいだ。



俺にとってはそれが普通で、父さんとはそういうものだと思っていた。



何度か父さんにいてほしいと思ったこともあるけれど、仕事だから仕方がないと、半ば諦めていた。



誕生日も、入学式も、運動会も、授業参観も、俺が怪我をして病院に運ばれても、来てくれないのは仕事だから当然…。



でも今日は、今だけは、心から父さんにいてほしかった。



母さんの傷ついたような顔を、初めて見たんだ。



何も出来なかった俺が悪いけど、父さんがいたら、母さんはあんな顔をしなくて良かったはずだ。



母さんのことも、あの人のことも、悲しませたのは父さんなんじゃないか?



だとしたら、あの人が言っていた、「父さんのようにならないで」という言葉の意味がわかった気がする。




それなら俺は、父さんのようにはならない。あの人の為にも、母さんの為にも、自分の為にも。



強く、強く、そう心に刻んだ。

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