第12話

「……五億出すってか?」


「それはあなたが確認して」


「は?お前の口座だろ?」


「あそこの引き出しに、カードと通帳と印鑑が入ってる。暗証番号を書いたメモもあるから」


「……おい、お前…」


「もし振り込まれなくても、その口座に入ってるお金は全部あげるわ。神田から嫌味のように毎月振り込まれていたお金、一切手を付けてないから」


「…なんで…」


「それで会社をやり直すなり、可愛い元従業員に渡すなり好きにして。わたしには、あの子さえいればいいから」


「お前、まさか最初から…」


「こんな馬鹿げた茶番に付き合ってくれたお礼よ。わたしに妹なんていないこと、とっくに気づいてたでしょ?」


「……」


「神田は会社の為に警察沙汰にはしないはずだから、今すぐそれを持って逃げな。もうじき来るだろうから」


「……」


「最後に二人で話させてよ。時間がないの」


「……」


「早く!!」


「─ちっ」

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