享楽外道の異世界発明記

佐賀佐内手 久田斎

第1話

初めての方は初めまして。

前作からの方は、お付き合いありがとうございます。

書いといてなんですが、だいぶ人に嫌われるタイプの主人公ですので、

ムリだと判断したら、速やかに離れることをお勧めします。

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「うーみーは、ひろいーな、おーきーなー」


 仕事で乾燥地帯に派遣されて幾年月、久しぶりに日本に帰ってきたので、シーズン前の海を眺めながら歌を口ずさむオレ氏。仕事帰りの途中でそのまま寄ったので、大きな荷物が横に置いてある。

 シーズン前だがそれなりに人がいて、男子学生グループがワイワイやってたり、ママさんグループが子供を連れてアハハと笑ってたり、恋人たちがイチャイチャしてたりする。

 それぞれ青春や幸せを謳歌する姿は眩く輝いており、最後は爆発して輝いて欲しい。

 久しぶりに懐かしい日本の空気を感じていると、突如、渦潮が発生して、そのまま海岸も飲まれていった。

 地盤沈下かと思う暇もあらば、オレや周囲にいた人間もそのまま飲み込まれていった。






 しばらく、どれくらい意識を失っていたのかは分からないが、オレは仰向けになっていた様子で、目を開けてみると、どこまでも高く、白い空間が広がっていた。


「見えない天井だ」


 お約束のセリフが言えなかったのが悔しいので、でも諦めきれずにちょっとだけ改変して使ってみた。少し気分がいい。

 起き上がってまわりを見渡すと、さっきまで一緒に海岸にいた人たちが、同じように起き上がってくるところだった。同じように辺りを見回しては、不安そうにしているのと、反対にキラキラと目を輝かせているのがいる。

 シチュエーションが鉄板だもんな。わかる。わかる。

 やがて全員が起き上がったタイミングで、とんでもない美人が空から降りてきた。親方、そらからおんなのこが。……女の子扱いするには年がいってるか。

 降りてきた女は慈しみの眼差しをつくりあげると、口を開いた。


「皆様、わたくしは皆様方からすると異世界の女神に当たります。ナイアファニンと申します。

 まずは一つ、皆さまに謝罪をせねばなりません。お恥ずかしい話ですが、わたくし共の創造した世界の一つが崩壊した余波で、皆様方の世界に穴が開いてしまい、それに皆様方が巻き込まれてしまいました。現在の皆様方は死亡した状態です。再び生き返らせるといったような対処も不可能になります。

 誠に申し訳ございません」


 その言葉に喧喧囂囂けんけんごうごうの非難が飛び交っている。主に先程不安そうにしていたグル--プからだ。

 目が期待で輝いていたグループは、非難をしているグループを落ち着かせようと頑張っている。早く次に進みたいのが丸わかりだ。素直でよろしい。

 収拾がつくまで時間が掛かるだろうから、暇つぶしが欲しいのでスマホをチェック。電波は入らないけど、ダウンロードしていたアプリは使えるらしい。ゲームアプリを起動して、しばらく暇をつぶす。

 電池が少し怪しくなってきたので、携帯充電器を取り出そうとすると、周囲の喧騒が止んでいた。

 そして、全員から信じられないものを見る目で見られている。何さ?


「終わったの?話、進めて貰える?」


 なんだ、コイツ?の眼差しを向けられながら、女神(仮)からのお話の続きを望む吾輩。

 吾輩からの言葉に面食らっていたが、気を取り直したらしく(仮)が再び口を開く。


「皆様方を死亡させてしまった事については、お詫びのしようもございません。

 また、一度、世界の境界を越えてしまった事により、元の世界に戻す事も不可能です。

 そこでせめてものお詫びとして、皆様方をわたくし共が管理している世界に転生させていただきます。体も残ってはいますので、そのままの体で送らせていただきます。

 それ以外に可能な範囲でわたくし共の方から、お送りする世界で不自由が無いように、能力を付加させていただきます」


 (仮)の言葉に悲嘆にくれるグループと、チートキタコレと言わんばかりのグループに、やはり分かれている。

 そこで、ワイ氏は手を挙げてみる。

 気付いた(仮)はほんの少し警戒する様子を見せる。

 なんでや。ワイ氏が一体全体、何をしたっちゅーねん。なぜかワイ氏が関わる人間は、直ぐに何を言い出すのかと警戒しだすんだが、まさか女神(仮)にまで警戒されるとは思わんかった。

 それでも(仮)はこっちの質問を聞く気はあるらしく、発言を促してきた。


「……何でしょう?」

「その送られる世界ってどんなとこ?あと、貰える力って?」


 ワッチの質問がいたって常識的だったからだろう。(仮)はパッと顔を輝かせて、嬉々としてワッチの質問に乗ってきた。


「ああ!申し訳ございません。先にそちらを説明させていただきます」

「まあ、実を言うと見当はついてるんだけども」

「そうなのですか?」

「まあの。ワシらが転生する事になった状況を考えれば、明白じゃて」

「あ、はあ?……そうなのですか?」


 ワシの喋り方が急に変わったからか、戸惑った様子を(仮)だけではなく、その場の全員が見せる。

 ワシはそんなことは気にも留めず、タメを作ってから切り出す。


「……送られる世界は、……そう、海と大地の狭間、バイストン・ウェ「どこですか?そこ」」


 は?なん、だと……?

 (仮)のその反応に納得がいかず、厄介クレーマーと化して猛抗議してみる。


「バ〇ストン・ウェルはバイ〇トン・ウェルだよ。バイス〇ン・ウェル。……わかる?バイスト〇・ウェル」

「……ごめんなさい。分かりません」


 なん、だと……?(2回目)


「それじゃ、貰える力って?オ〇ラ力じゃないの?虫っぽい人型機動兵器は?射撃武器な物理学者が開発したヤツ。聖〇士はいるよね?ジャ〇バ・ア〇ン」


 怒涛の追及に女神(木偶)はオロオロとしだした。


「オーラ……魔力なら在ります。ひとが……しゃげ……ごめんなさい。よく分かりません。聖騎士なら存在しますが。…………最後の呼び方は何ですか?」

「ガッデム!!」


 違うんだよ!全く違うんだよ!魔力じゃねぇんだよ!!聖騎士じゃねぇんだよ!!そして、新しいフェ〇リオの王様じゃねぇのかよ!!

 あまりのショックでorzをしていると、背中をポンと叩かれた。目を向けると一人の男子高校生らしき人物が、慈愛に満ちた眼差しでウンウンと頷いている。

 どうやらオレ氏の悲しみを理解してくれるらしい。

 思わず抱きしめ叫んでしまった。


「同志よ!!!!」

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